【絵本の紹介】「ちいさなねこ」【279冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は絵本界、いや児童文学会の重鎮中の重鎮、石井桃子さんによる絵本を紹介します。

戦後日本の絵本は、様々な方々の尽力と貢献によって発展しました。

 

その中でも船頭的役割を担ったのが、瀬田貞二さんと石井桃子さんだったと思います。

私を含め、今の親の世代で、およそ石井さんのお世話にならなかった人が存在するでしょうか。

 

まだ絵本が子どものおもちゃ程度に認識されていた時代に、石井さんは優れた海外の絵本や児童文学を次々に翻訳されました。

ピーターラビットの絵本」も、「ちいさなうさこちゃん」も、「ちいさいおうち」も、「くまのプーさん」も、石井さんがいなければ私たちにこんなになじみ深いものにはなっていなかったでしょう。

 

それだけ多くの名作の翻訳を手掛けてきた石井さんの創作した絵本が、面白くないわけがありません。

1963年に「こどものとも」で発表して以来、今も子どもたちに読まれ続けている「ちいさなねこ」。

作:石井桃子

絵:横内襄

出版社:福音館書店

発行日:1967年1月20日(こどものとも傑作集)

 

内容は、わりとシンプルで短いものです。

大人が読むと、何の感慨もなしに読み飛ばしてしまうかもしれません。

 

しかし、ここには子どもが夢中になるリアルなストーリー展開と、そして何度でも繰り返したくなる完璧な構成があります。

横内さんの精緻な絵、石井さんの的確な文、それらが絵本の本質部分をしっかりと捉えているからこそ、いくら古くなろうともこの絵本は子どもたちにとって魅力的であり続けるのです。

 

ちいさな ねこ、おおきな へやに ちいさな ねこ

という最初の見開きで、子猫の周囲の余白を効果的に使っています。

 

そして子猫は縁側から庭に下り、外の世界へ向かって走り出します。

おかあさんねこが みていないまに、ひとりで でかけて だいじょうぶかな

石井さんの語りかけるような文により、読者は子猫を心配し、同時に子猫に自身を投影してワクワクします。

子どもに捕まり、通りで自動車に轢かれそうになり……(町並みの古臭さよ)。

ハラハラドキドキの連続。

そして怖いもの知らずの子猫の活躍は痛快の一言。

自分よりずっと大きな犬にも怯みません。

爪で鼻をひっかいて、怒った犬に追いかけられ、木の上に逃げます。

 

そしてここで絶対的存在のおかあさんねこが登場します。

あそんでいる こどもの そばを とおりぬけ、じどうしゃを よけて

と、ここでさりげなく子猫との違いを描いています。

何という安心感でしょう。

 

さらには木の下で大きな犬を追い払う頼もしさ。

いたずらな子猫を有無を言わせず口にくわえ、危なげなく帰宅します。

この子猫可愛い。

 

最後におかあさんねこのおっぱいを飲む子猫の姿を描き、お話は終わります。

このラストシーンがあるからこそ子どもは安心し、子猫の冒険を幸せな気持ちで楽しむことができるのです。

 

★      ★      ★

 

この子猫は、石井さんが昔拾って育てた、怪我をした子猫がモデルになっているそうです。

 

小さな動物が、ちょっとした冒険に出て、そして帰ってくるという話型は、幼児絵本のひとつの王道です。

同じ形式の絵本は「こすずめのぼうけん」や「アンガスとあひる」などがあります。

 

≫絵本の紹介「こすずめのぼうけん」

≫絵本の紹介「アンガスとあひる」

 

この絵本を「親の言うことを聞かずに一人で出かけると、危ない目に遭う」という「教訓」として読み聞かせるのは自由ですが、そうした捉え方ははっきり言って的外れです。

子どもにとって、自分の分身と思える主人公の冒険と活躍、そして最終的に安心できる場所への帰還という物語をたくさん読んでもらうことは、これからの人生にとって非常に重要な力となるのです。

 

2008年に亡くなられた石井さんは、享年なんと101歳。

彼女が生涯を通して子どものために成された仕事の数々を思う時、私は自然と頭が下がってしまうのです。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆

おかあさんねこの貫禄度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ちいさなねこ

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