【絵本の紹介】「しずくのぼうけん」【277冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はポーランドのロングセラー科学絵本「しずくのぼうけん」を紹介します。

作:マリア・テルリコフスカ

絵:ボフダン・ブテンコ

訳:内田莉莎子

出版社:福音館書店

発行日:1969年8月10日

 

しずくから棒状の手足が伸びただけのシンプルなデザイン。

子どもが入って行きやすい絵です。

 

れっきとした科学絵本ではありますが、少しも難しいことは書いていません。

とにかく主人公のしずく(女性)の目まぐるしい冒険にワクワク・ドキドキ、そしてしずくの自由自在な変化が痛快です。

文章はやや長めですが、名翻訳者・内田莉莎子さんによるテンポのいい訳文で一気に読めます。

 

ある すいようびの ことだった むらの おばさんの バケツから ぴしゃんと みずが ひとしずく とびだして ながい たびに でた ひとりぼっちで たびに でた

 

こんな具合に5・7・5調の心地よいリズムが続くんですね。

泥水に混じったり、太陽に照らされて蒸発したり。

雲の上で雨粒になったしずくは、怖い黒雲に再び地面に戻されます。

 

そして今度は寒い夜に氷のかけらに変身。

小川に転げ落ちて水道管に入り、民家へ。

息をつく間もない展開が読者を引き付けて離しません。

何度も状態変化を繰り返し、どんな環境でも生き延びるしずく。

水は不滅なのです。

 

★      ★      ★

 

幼い子どもにとって、水はもっとも身近な自然観察の対象です。

水が蒸発して見えなくなるということを、この絵本は非常にわかりやすい物語の形式で教えてくれます。

 

そこから学べることは、単なる科学知識だけではありません。

目の前にある水は、見えなくなってもちゃんと存在しており、ずっと「旅」を続けているのだという、壮大な物語の想像力を受け取ることができるのです。

 

今、ここにある水は、いつか遠い異国を旅して辿り着いた「しずく」なのかもしれない。

消えてしまっても、見えなくても、必ずいつかは再び大地に戻ってくる。

 

大げさに思われるかもしれませんが、この科学的事実から、人間は「見えないものを見る」力、そして「輪廻転生」の概念をも受け取ることが可能なのです。

 

頭の固い大人たちは、「子どもには実証された科学知識だけを教えるべき」だと思い込みます。

しかし現実には、人間が生命力を得るのは、豊かなイメージの世界からなのです。

「水の不滅性」から、子どもはどれほど力強いイメージを受け取ることでしょう。

それこそが、彼らの長い人生においての真の礎となるのです。

 

正しい自然法則から、美しい想像の世界へ橋を架ける時、科学知識は初めて生命を吹き込まれます。

その崇高な架橋に成功したからこそ、この絵本は世界中で愛され続けているのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

しずくのネガティブ思考と立ち直りの早さ度:☆☆☆☆☆

 

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