【絵本の紹介】「エンソくんきしゃにのる」【273冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は奇才・スズキコージさんの初期の代表作「エンソくんきしゃにのる」を紹介します。

作・絵:スズキコージ

出版社:福音館書店

発行日:1990年9月15日(こどものとも傑作集)

 

スズキさんの描く絵はいつもどこの国かわからないんですが、独特のムードがあって、本当にこんな国がありそうな気がします。

一度ハマるとクセになるタッチで、「こどものとも」などで人気の画家だったスズキさんですが、この「エンソくんきしゃにのる」は彼が初めて文も自分で書いた作品です(たぶん。間違ってたらごめんなさい)。

 

あの絵を描く人がいったいどんな物語を作るのか、興味をそそられる人も多かったのではと思いますが、期待を裏切らない摩訶不思議ワールドを展開してくれます。

ほげたまちの ほげたえき」に、主人公の「エンソくん」が登場。

これから一人で汽車に乗っておじいさんのところへ遊びに行くのです。

主人公が汽車で旅をするというのは乗り物絵本の定番というか、王道ど真ん中なストーリーではあるんですが、そこはスズキさん。

登場人物は駅員も乗客も、実にエキセントリックです。

 

そして途中で通る町や駅の情景は強烈なまでにオリジナリティに溢れています。

高原の駅では、羊飼いの男が羊の大群と共に乗り込んできて、車内は羊で埋め尽くされます。

そこにまた個性のある駅弁売りがやってきて、エンソくんはお弁当を買います。

中身は「ひつじのかたちの コロッケ」と「ゆでた とうもろこしが ぎっしり」。

さらに羊飼いが羊の弁当の草を堂々と床に撒き、羊たちはいっせいに食べ始めます。

もう何だか凄いことになってます。

 

そして終点では、これまた普通でない感じのおじいさんが、ヤギ(たぶん)に乗って迎えに来ます。

 

★      ★      ★

 

エンソ」という名前は元素から。

それに「くん」をつけて「遠足」とかけているそうです。

 

スズキさんの言語感覚というのは本当にユニークで、「ほげた」とか、途中の駅の「ほんと」終点の「ほいざ」とか、ネーミングセンスが攻めてます。

 

自由過ぎる作風は今も昔も変わりませんが、それでもやっぱり、最近のスズキ作品と読み比べてみると、初期の頃の初々しさのようなものも感じます。

それは代替不可能な感性を持った作者が「絵本」を描く時、どうやっても既存の枠からはみ出してしまうことに対して、「ほんとにこれでいいのかな?」と少々不安を抱きつつ、結局「でも、どうしてもこうなっちゃうな」と筆を進めていく過程を表しているような気がします。

 

それが、エンソくんの「はじめて ひとりで きしゃに のるので きんちょうしています」という一文に重なっているような気がする……と言ったら、私の読み過ぎでしょうかね。

 

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推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

車内フリーダム度:☆☆☆☆☆

 

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