【絵本の紹介】「ベンジャミン・バニーのおはなし」【270冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は世界で一番愛されているうさぎ「ピーターラビット」シリーズより、「ベンジャミン・バニーのおはなし」を紹介します。

作・絵:ビアトリクス・ポター

訳:石井桃子

出版社:福音館書店

発行日:1971年11月1日

 

このシリーズは私も個人的に大好きでして、全作品を取り上げたい気持ちなのですが、こればっかりやるわけにもいかず、いつになるやら。

≫絵本の紹介「ピーターラビットのおはなし」

≫絵本の紹介「パイがふたつあったおはなし」

 

さて、「ピーターラビットの絵本」は、同じ世界を舞台にした様々なキャラクターの活躍を描くシリーズです。

「ピーターラビットの」とタイトルは付けられていても、ピーターが登場しない作品のほうが多いです。

 

しかし、意外なところでキャラクター同士の繋がりがあったり、ストーリーには絡まなくてもイラストのみに登場するキャラクターがいたり。

こういう群像劇っぽいシリーズは、絵本では珍しいような気がします。

 

この「ベンジャミン・バニーのおはなし」は、シリーズ2作目にあたり、唯一前回からの流れを引き継いで展開される物語になっています。

つまり、「ピーターラビットのおはなし」で、マグレガーさんの畑に侵入したピーターが散々な目に遭い、靴も上着もなくして逃げ帰ってきた後のお話です。

ベンジャミン・バニーはピーターのいとこ。

ピーターのお母さんの兄の息子にあたります。

 

ほっぷ・すきっぷ・あんどじゃんぷ」をしながら登場。

ベンジャミンはおばさんであるピーターの母親は苦手のようですが、ピーターとは仲良し。

 

元気なく赤い木綿のハンカチにくるまっているピーターから、先日の災難について聞き出します。

ベンジャミンは、マグレガーさんたちが馬車で出かけている隙にピーターの服を取り返しに行こうと考えます。

 

二人は連れ立ってマグレガーさんの畑に侵入します。

かかしに着せられていたピーターの上着と靴はすぐに回収できました。

すっかり怯えていて、終始そわそわしているピーターに対し、ひどい目に遭ったことないベンジャミンは怖いもの知らずといった様子で、畑から玉ねぎを失敬し、おみやげにしようとしたり、レタスをつまみ食いしたりします。

 

そしてゆうゆうと帰ろうとした時、二人はマグレガーさんの猫に遭遇してしまいます。

ベンジャミンはとっさに自分とピーターに大きなかごをかぶせ、隠れます。

 

ところが猫が近づいてきて、そのかごの上に乗って昼寝を始めてしまいます(5時間も!)

 

ここで救世主のごとく登場するのが、ベンジャミン・バニーのお父さん。

その名もベンジャミン・バニー氏。

 

くわえパイプに、手には短い鞭を持ち、猫などまったく問題にしない堂々たる態度でやってくると、いきなり猫に飛びかかって温室に蹴り込んで戸に鍵をかけて閉じ込めてしまいます。

ベンジャミンたちはかごから助け出されますが、ベンジャミン・バニー氏に鞭でお尻をぶたれてしまいます。

絵を見ると、ピーターも一緒にぶたれています。

 

二人はお尻を押さえて泣きながら、ベンジャミン・バニー氏はたまねぎの入ったハンケチを持ってゆうゆうと、マグレガーさんの畑を後にします。

 

ピーターのお母さんは、ピーターが上着と靴を取り戻してきたことを喜び、ピーターは叱られずに済みます。

 

★      ★      ★

 

ピーターもベンジャミンも、作者のポターさんが飼っていたうさぎの名前です。

ことに、ポターさんは「興奮しやすく、快活で、愚かしく見えるほどに人懐こくてセンチメンタルで、見下げ果てた臆病者」と日記に評してあるベンジャミンを可愛がっていたようです。

本物のベンジャミン・バニーについては、ポターさんの日記上に愉快なエピソードがいくつも残されています。

 

そして、頼もしくも恐ろしい父親ベンジャミン・バニー氏ですが、息子たちが成人した後のエピソード「キツネどんのおはなし」では、息子の嫁に叱られる子どもっぽいおじいちゃんになってしまいます。

そのあたりの変化も、シリーズ通しての発見の楽しみです。

 

イラストの美しさは言うに及ばず、テキストにおいても相変わらずポターさんの筆は冴えわたっており、必要なこと以外は何も語りません。

その一方で、前回は描かれなかったピーター一家の暮らしぶりなどが描かれ、ピーターのお母さんが「うさぎの毛の手ぶくろ」や「そで口かざり」を編んだり、せんじ薬や「うさぎたばこ」(ラベンダーのこと)を売ったりして生計を立てていることなどがわかります。

 

そこでさらりと「わたしも、まえに、ばざーで、ひとくみ かったことがあります」とポターさんは言うのです。

こんなふうに、このシリーズでは時折作者自身が作中に登場します。

 

このたった一言で、この世界は単なる空想ではないことが読者に伝わります。

ポターさんは「現実に」ピーターたちと会って、関りを持っているのです。

マグレガーさんからは追いかけ回され、パイにされてしまいそうになるうさぎたちは、一方で人間相手に商売をしているのです。

 

この一文に、大人は戸惑い、子どもたちはワクワクさせられるのです。

ポターさんの絵本の凄みは、このようなさりげない一文にも秘められているのです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

ベンジャミン・バニー氏無双度:☆☆☆☆☆

 

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