「みんなのレオ・レオーニ展」に行ってきました【伊丹市立美術館】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

前回の記事で言っていたように、11日から開催している「みんなのレオ・レオーニ展」に行ってきました。

公式HP→『みんなのレオ・レオーニ展』

 

会場は以前に林明子さんの「えほんのひきだし」展も開催していた伊丹市立美術館。

このブログではひろしま美術館でのレポートを書きましたが、実は伊丹のほうにも行ってます。

 

中に庭園があり、地下もあり、ちょっと入り組んでますが綺麗な美術館です。

電車で行くとまあまあ歩きます。

 

日本でも人気の高いレオニ(レオーニ)さんの絵本。

その内容はどこか哲学的で、作者の知性や崇高な思想を感じさせます。

それは彼の波乱に満ちた生涯が関係しています。

 

レオニさんは1910年にオランダのアムステルダムで生まれます。

父親はダイアモンド・カッティング専門士、母親はオペラ歌手。

伯父はかなりの美術蒐集家だったようで、レオニさんは幼い頃からピカソやシャガールなどの芸術作品に触れて育ちます。

 

その後、父親の仕事の関係でアメリカやヨーロッパ、イタリアを転々とします。

様々な国の文化や言語に触れたことが、のちに絵本作家としての彼の仕事に大きく影響したと思われます。

 

1939年、29歳の時にレオニさんは家族を連れてイタリアからアメリカに亡命します。

イタリアではムッソリーニの独裁体制で、反ファシズム運動家でユダヤ人だったレオニさんは身の危険を感じたのです。

 

第二次世界大戦後、アメリカで画家や彫刻家として認められはじめたレオニさんですが、マッカーシー上院議員の台頭と、それに伴うマッカーシズムの攻撃により仕事を奪われ、窮地に追いやられます。

 

それでも、マッカーシーの失脚とともにレオニさんは年間最優秀アートディレクター賞を受賞するなどして復帰を果たし、そして1959年、最初の絵本「あおくんときいろちゃん」を制作・発表するに至るのです。

 

この「あおくんときいろちゃん」は、孫の扱いがわからなくて困ったレオニさんが、たまたま手元にあった雑誌の広告ページから、青い紙と黄色い紙をちぎって即興のお話を作ってやったのがきっかけだったと言います。

 

抽象化の極致のようでいて、ごく自然に膨大なイメージを喚起される作品で、すぐに子どもたちからも支持を集めました。

レオニさんの絵本作りの土台というか背骨のようなものは、すでにこの時点で完成していたことがうかがえます。

 

彼の作品には常に無駄がありません。

わかりやすく、それでいて重厚なメッセージに貫かれています。

そしてよくよく読み込めば、二重三重の深みが隠されてもいるのです。

 

逆境の中で己を見つめ直し、真実を見極めることのできる崇高な「眼」を育てる「スイミー」や、一見すると生産性のない芸術家的存在の変わり者が最終的にコミュニティを救う「フレデリック」など、レオニさんの作品には、作者自身の理想とする社会像や、人間同士の関係性、「自分とは何か」を問い続ける物語が描かれています。

 

そして何より、彼の作品の深部で核を成しているものは、「平和への祈り」です。

「あおくんときいろちゃん」も、隠されたテーマは「青」と「黄色」という異なる他者同士の交流と絆です。

 

それは世界各地を転々とし、様々な偏見や攻撃に晒されながら表現活動を続けた作者自身の物語なのでしょう。

 

今回の展覧会ではそうしたレオニさんの生涯や絵本原画を紹介するとともに、絵本とは違う彼の彫刻家としての仕事なども見ることができます。

 

そして幻と言われる「スイミー」の5点しかない原画も公開されています。

これは絵本とはずいぶん色合いが違って渋い印象になっています。

レオニさんが原画として新たに描き直したものなのか、それとも絵本製版の工程で現在の色彩になったのか、今となっては知るすべもないそうです。

↑これはグッズのポストカードですが、原画版です。

 

また、レオニさん自身が手掛けた彼の絵本のアニメーションも上映されていました(グッズ売り場にてDVDも販売)。

動く「スイミー」や「さかなはさかな」、「コーネリアス」などに感動しました。

細部において絵本とは違っていて、その違いも楽しめます。

 

これがグッズ売り場の横で上映されているという計算高さ。

子どもをここに座らせておいて、ゆっくりグッズを漁れるわけです。

 

息子も喜んで観ていました。

知っている作品だけに興奮したのだと思いますが、居並ぶ子どもたちの中で一人だけゲラゲラ笑って衆目を集めていました。

↑グッズはぬいぐるみ、マグカップ、小皿、キーホルダー、ポストカード、トートバックにTシャツなどなど、充実しておりました。うちの店にもまた仲間が増えました。

 

キャラクターとしてこれだけ可愛いのに、可愛いだけでないのがレオニさんの絵本の凄いところ。

大人の一人読みにも十分耐える深みと厚みがあります。

今の時代だからこそ、もう一度彼の絵本を手に取ってみて欲しいと思います。

 

関連記事:≫絵本の紹介「スイミー」

≫絵本の紹介「フレデリック」

≫絵本の紹介「シオドアとものいうきのこ」

 

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

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