【絵本の紹介】「わにさんどきっ はいしゃさんどきっ」【240冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは五味太郎さんの「わにさんどきっ はいしゃさんどきっ」です。

作・絵:五味太郎

出版社:偕成社

発行日:1984年5月

 

きんぎょがにげた」のような幼児向け探し絵絵本、「まどからおくりもの」のような穴あきしかけ絵本、ユニークなアイディアの詰まった様々な絵本を発表している五味さん。

 

≫絵本の紹介「きんぎょがにげた」

≫絵本の紹介「まどからおくりもの」

 

非常に多作で、よくあんなに次々と独創的な発想が生まれるものだと感心します。

彼の絵本は物語そのものよりも構造的な部分に試行錯誤が見られます。

五味さんの絵本と言えばユーモアやナンセンスといったイメージが先行しますが(事実そうですが)、そういう意味では、非常に知的な作品が多いとも言えます。

 

この「わにさんどきっ はいしゃさんどきっ」も、「実験的かつめちゃくちゃ笑える」五味さんらしい作品です。

 

虫歯のわにさん、渋々歯医者さんへ。

ゆっくり あそんでいたいけど いかなくちゃ いけないね

 

一方、趣味の機械いじりをしていた歯医者さん、患者さんの来訪に、

ゆっくり あそんでいたいけど いかなくちゃ いけないね

 

そしてわにさんは歯医者さんの手のドリルとペンチを見て、歯医者さんは患者さんがわにであることを見て、互いに

どきっ

お互いに

こわいなあ……

 

もうこの絵本の仕掛けがわかりますね。

つまり、わにさんと歯医者さんはそれぞれの立場・心情がありながら、セリフだけは全く同じなんです。

いたい!

とわにさんが思わず口を閉じると、腕を噛まれた歯医者さんも

いたい!

 

もう ひどいじゃないか

もう ひどいじゃないか

 

もうすこし がんばれ

もうすこし がんばれ

治療が終わると

ほっ

ほっ

 

いやいや もう にどとは あいたくないね

いやいや もう にどとは あいたくないね

 

だから はみがきはみがき

だから はみがきはみがき

 

★      ★      ★

 

なるほどこうきたか、という感じです。

ラーメンズのコントにこういうのがあったのを思い出します。

 

この絵本の笑いを理解するには、表面の言葉を読むだけでなく、その裏の登場人物の心理を想像するという作業が要求されます。

こういうと難しそうですが、そこは絵本らしく、至って易しい内容ですから、幼児にもちゃんと理解できます。

 

我が家の息子も、2歳ごろにこれを読んでげらげら笑っていました。

まあ、単に「同じ言葉が二回繰り返される」だけで面白かったのかもしれませんけど。

 

それにしても、五味さんの描くオジサンは味がありますね。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

歯医者さんの人間臭さ度:☆☆☆☆☆

 

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