【絵本の紹介】「からすのパンやさん」【239冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今月2日に、絵本作家の加古里子さん(本名・中島哲さん)が亡くなられていたことがわかりました。

死因は慢性腎不全だそうです。

 

92歳。

緑内障や腰痛といった持病を抱えながら、今年に入って「だるまちゃん」シリーズを3作同時発表したり、亡くなる直前まで精力的に創作活動を続けておられました。

 

哀悼の意をこめて、今回は「だるまちゃん」と並ぶ加古さんの代表作「からすのパンやさん」を紹介します。

作・絵:かこさとし

出版社:偕成社

発行日:1973年9月

 

説明不要のロングセラー。

この絵本を読んで育った世代が、今、自分の子どもに読んであげているのではないでしょうか。

 

かく言う私もそんな加古さん絵本で育った一人。

もっとも、子どもの頃は絵本作者の名前なんて意識していませんでしたが、とりあえずこの「かこさとし おはなしのほん」装丁の絵本は全部おもしろいということは知っていました。

 

「だるまちゃん」シリーズにも共通しますが、加古さんの絵本には細かい絵をじっくり鑑賞する楽しみがあります。

この「からすのパンやさん」は特にそれが顕著で、テキストも優秀ながら、それを遥かに上回る情報量の絵に圧倒されます。

 

私は保育所でこの絵本を見たのですが、先生に読み聞かせてもらうたびに、最大の見せ場であるずらりと並んだ変わりパンのページを一人で心ゆくまで見尽くしたいという欲求に駆られた記憶があります。

それは他の友達も同じだったようで、自由時間には「からすのパンやさん」の争奪戦が繰り広げられていました。

 

いずみがもりの くろもじ さんちょうめ」にあるからすのパンやさん。

そこに生まれた4羽の赤ちゃん。

それぞれの体の色にちなんで「オモチちゃん」「レモンちゃん」「リンゴちゃん」「チョコちゃん」と名付けられます。

子育てと仕事に追われるからす夫妻。

経営はうまく行かず、家はだんだん貧乏に。

 

しかし、子どもたちがきっかけとなり、新しい変わったパンを焼いたところ、一気に評判に。

 

そこで、一家は子どもたちの意見も取り入れ、さらにたくさんの変わりパンを焼くことにします。

さあ、からすの森では、朝早くからパン屋に向かうからすたちで大騒ぎ。

噂が噂を呼び、騒ぎはますます大きくなって、何だかよくわからない人々や、警官隊や消防隊員まで一路パン屋を目指します。

からすのお父さんはこの大混雑をうまく誘導し、きっちり並ばせてパンを売りさばきます。

 

★      ★      ★

 

やや子どもには耳慣れない言葉も取り入れたテンポのいい文章、勤労の喜び、家族の絆……色々な魅力が詰まった作品ですが、何と言ってもパンの豊富さ、そして登場人物の多さが楽しい。

 

脇役のからす一羽一羽を個性豊かに描き分け、よく見ると表情もそれぞれ違います。

こういう加古さんの仕事にはいつも敬服させられます。

 

加古さんはその卓越した観察眼を活かして、科学絵本も多数手がけています。

子どもに何を伝えるべきなのか、どうすれば子どもひとりひとりが正しい判断のもと生きていけるのか。

そんな加古さんの子どもへの思いの原点は、自身の戦争体験にあると言います。

 

戦争を体験した絵本作家もどんどんこの世から去っていくのだと感じるとき、まさに今、子どもを育てる世代の人間として責任を考えさせられます。

彼らが残したもの、伝えたかったことを、きちんと次の世代にバトンタッチできるでしょうか。

今はただ、日本絵本界の長老的存在を失くしたという深い喪失感に打たれています。

 

体調を心配する家族に「少し休んでは」と言われると、「死んでから休む」と答えた加古さん。

どうか、ゆっくりと休まれてください。

ご冥福をお祈りします。

素晴らしい作品をありがとうございました。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

アイディアの豊富度:☆☆☆☆☆

 

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