【絵本の紹介】「となりのせきのますだくん」【238冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

GWも終わり、平常通りの仕事や授業が始まりますね。

今後7月の海の日まで祝日がないことを思うとちょっとブルーな気持ちになってしまったり。

 

入学当初は元気いっぱいだった小学校一年生の子どもたちでも、学校が楽しいばかりのところではなくなってくることもあるでしょう。

この連休明けは特に、「学校行きたくない」と言い出す子も出てくるのではないでしょうか。

 

子ども・大人問わず、憂鬱な五月病の気分は同じ。

今回はそんな誰しもが共感でき、そしてあたたかく、懐かしく、そしてどこか切ないユーモアが感じられる絵本を紹介します。

となりのせきのますだくん」です。

作・絵:武田美穂

出版社:ポプラ社

発行日:1991年11月

 

この強烈なインパクトの表紙くらいは見たことのある人が多いのではないでしょうか。

題字も絵柄もとてもポップで可愛らしいですが、女の子と机を並べて座っているのは緑色の大きな怪獣。

 

この怪獣がフキダシで「こっからでたらぶつからな」と言いながら、女の子との間に鉛筆で境界線を引いています。

その境界線が明らかに女の子の領域を侵犯している理不尽。

女の子は不満そうに口を曲げながらも、怪獣が恐ろしくて言い返せない様子。

 

表現方法やキャラクター造形はかなり漫画的、というか、漫画そのもの。

でも、子どもの普遍的な心を繊細に捉えている点で、これは非常に優れた絵本作品に違いありません。

 

子どもの心を捉えた、と書きましたが、作者の武田さんはこの「ますだくん」を頭で考えてひねり出したわけではなく、作者自らの子ども時代をそのまま描き出したのだと思います(女の子の名前は作者と同じですし)。

瞠目に値するのは、作者の瑞々しい記憶力です。

単に事物を覚えているのではなくて、子どもの目線・感性・心情をそのままの形で保持し、なおかつそれを描き出していることです。

これは、絵本作家にとって最も重要な才能と言ってもいいと思います。

 

主人公のみほちゃんは、今日学校に行きたくありません。

あたまがいたくなればいいのに

おなかがいたくなればいいのに

ねつがでればいいのに

そんなことを考えながら、憂鬱な気持ちで登校します。

みほちゃんが学校に行きたくない理由は、「となりのせきのますだくん」(表紙の怪獣です)。

何かと意地悪してくるますだくんを、みほちゃんは怖がっているのです。

ますだくんは見た目は怪獣ですが、勉強も体育も得意な活発な生徒。

対してみほちゃんは、算数、縄跳び、かけっこ、給食のにんじん……苦手なものがたくさんある、引っ込み思案な女の子。

 

ますだくんはそんなみほちゃんに、いちいちからんできては、「いけないんだー」と先生に言いつけます。

でも、こんな男の子、いましたよね。

好きな女の子に意地悪するという。

 

でも、当の女の子にしてみれば、本気で嫌なのは当たり前。

そして事件は昨日の帰りの時間。

ますだくんの悪ふざけがエスカレートしたのか、みほちゃんが誕生日にもらった「いいにおいのするピンクのえんぴつ」を折ってしまいます。

 

いつもはやり返せないみほちゃんも、この時ばかりは怒りが爆発、ますだくんに消しゴムをぶつけます。

初めての反撃に、ますだくんはびっくり。

みほちゃんは自分のやったことに慌てて逃げ帰りますが、今日学校へ行ったらきっとますだくんにぶたれると思い、それで休みたがっていたのです。

 

ここからナレーションは中断され、コマ割りによる演出で、みほちゃんが学校の正門をくぐるシーン。

正門のところにはますだくんが待ち構えています。

 

みほちゃんはどきどきしながら、そっとその横をすり抜けて教室へ行こうとするのですが、ますだくんの手が伸びてきて……。

 

★      ★      ★

 

ラストのカットには「やられた」と思いました。

二人で並んで歩く後ろ姿、なんとますだくんは怪獣ではなく、人間の男の子として描かれています。

 

これはもちろん、ますだくんが変身したというわけではなく、みほちゃんの彼を見る目が変化したことを表しています。

ますだくんが怪獣として描かれていたのはオーバーな表現に思えるかもしれませんが、実際にみほちゃんのような大人しい子の目には、大きくて乱暴な同級生は恐ろしい怪獣そのものに映るのでしょう。

 

ますだくんが乱暴なところは変わっていないし、彼が自分の気持ちを素直に表現できるようになるには、まだまだ成長が必要でしょう。

でも、彼にも、そしてみほちゃんにも、ほんの少しの変化が訪れた。

それは子ども時代の眩い煌めきです。

 

ほとんどの大人が体験しつつも忘れてしまっているそんな煌めきを思い出させてくれる絵本というのは、実は意外と数少ないものです。

 

推奨年齢:7歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

ますだくんの愛おしさ度:☆☆☆☆☆

 

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