【絵本の紹介】「アンジュール ある犬の物語」【211冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今日から本格的にお仕事という方も多いと思います。

休みボケしそうですが、気持ちを新たに、新年最初の絵本紹介といきましょう。

 

ここはやっぱり戌年にちなんで、犬の絵本を持ってきました。

アンジュール ある犬の物語」です。

作・絵:ガブリエル・バンサン

出版社:BL出版

発行日:1986年5月1日

 

しかし、張り切ってタイトル紹介したはいいけど、考えてみればあんまり新年一発目に読むような景気のいいお話でもないんですね、これ。

地味だし、暗いし、悲しいし。

見てください、表紙の犬の寂しげな姿。

 

でも、まごうことなき傑作絵本です。

それに、絵本というものの原点とも言うべき要素を持つ作品でもあるので、あえて選びました。

 

まず、このお話にはテキストがありません。

完全に絵のみの、まさに「絵本」です。

 

さらにその絵も、黒鉛筆一本で描かれたモノクロデッサン風カット。

たったそれだけで、文の力も借りず、迫真の物語世界を構築している点に驚嘆します。

冒頭、一匹の犬が車から道端に投げ捨てられるという、衝撃のカットから始まります。

犬は突然の仕打ちに驚き、走り去る車を必死に追いかけます。

 

しかし、無情にも車は見えなくなってしまいます。

 

犬は匂いを辿り、追跡を続けますが、夢中になって道路へ飛び出したせいで、避けようとした車同士がぶつかり合い、炎上事故に。

犬はおののくように現場から離れ、長いさすらいを始めます。

もはや飼い主の車は完全に見失い、途方に暮れて遠吠えし、がっくりと肩を落として道を歩きます。

 

やがて日は暮れ、犬は町に流れ着きますが、ここでも邪険にあしらわれます。

居場所のない犬の前に、これも独りぼっちのように見える男の子が現れます。

近づいてくる男の子に、疲れ切った犬は顔を摺り寄せます。

 

★      ★      ★

 

一見荒々しいデッサンですが、犬の表情、肢体、構図、実に計算されていて、胸に迫るものがあります。

読み進めていくうち、見ているのが辛いほどの犬の絶望と慟哭が伝わってきて、しかしそれでも目を離せない。

 

車から突き落とされる犬の衝撃と困惑と悲嘆。

そして、恐ろしい大事故を引き起こしたことにより、読者はこの犬が社会的にも居場所がなくなったことを知らされるのです。

 

徹底した拒絶と孤独。

作者の筆は、容赦なく冷酷な現実を突きつけます。

 

最後の少年との出会いだけが救いなのですが、それすらも、何もかもが一瞬で転換するハッピーエンドではありません。

 

この少年は荷物を抱え、独りぼっちのようです。

彼がこの犬に引き寄せられたのは、同じ孤独な魂を感じたからでしょうが、寄る辺ない二人がこれからどんな暮らしを送るのか、果たして救いはあるのか、そうしたことは読者の想像に委ねられます。

 

そういう無限の解釈可能性を残す点も、この絵本が名作たるゆえんだと思います。

見る人一人ひとりの心に、深い何かを残さずにはおかない作品なのです。

 

「アンジュール」とは、フランス語で「ある一日」という意味で、タイトル通り、これはある犬の長い一日を描いた絵本ということになるのでしょう。

読み聞かせるには、字がないので、ただ黙ってページをめくるだけになってしまい、少々難しいです。

 

もちろん、子どもと内容について語らいながら読んでもいいのですが、この凄絶な静寂世界にふさわしい言葉を見つけるのは至難です。

ある程度の年齢の子どもに読むか、あるいは一人で読むのがいいかもしれませんね。

 

推奨年齢:小学生高学年〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

飼い主非道度:☆☆☆☆☆

 

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