【絵本の紹介】「手ぶくろを買いに」【209冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は新美南吉さんの傑作児童文学を黒井健さんが絵本化した「手ぶくろを買いに」を紹介します。

作:新美南吉

絵:黒井健

出版社:偕成社

出版年度:1988年3月

 

非常に有名な作品ですから、ご存知の方も多いでしょう。

私は教科書で読みました。

とても印象深い内容でしたので、大人になってからもずっと覚えていましたね。

 

作者の新美さんは1913年に愛知県で生まれ、結核のためにわずか29歳で亡くなられた童話作家。

早逝のため作品数は多くないのですが、その才能は宮沢賢治氏と並び称されるほど。

 

同じく黒井健さんによって絵本化されている「ごんぎつね」は、若干18歳の時のデビュー作です。

今の日本に、18歳であの美しい日本語が書ける人はいるでしょうか。

 

この「手ぶくろを買いに」も、童話としての完成度は言うに及ばず、とにかく文章が震えるほど美しい。

特に冒頭の、雪を見て驚き興奮する子ぎつねや、我が子の手に息を吹きかけて温めてやる母さんぎつねの描写力にはため息が出るばかりです。

可愛い坊やの手にしもやけができては可哀そうだから、毛糸の手袋を買ってやろうと考える母親ぎつね。

夜になってから、二匹は人間の町へと出かけます。

 

ところが、過去に人間に追い回された記憶を持つ母親は足がすくんでしまい、どうしても町に入れません。

そこで母親は坊やの片手を人間の手に変えてやり、白銅貨を二枚握らせて、ひとりで手袋を買いにやらせます。

決してきつねの方の手を見せないように言い含めて。

坊やは母親に教えられたとおりに帽子屋を見つけます。

ところがうっかりと、きつねの方の手を差し出してしまいます。

 

帽子屋さんはおやおやと思いますが、白銅貨が本物なのを確認すると、坊やに手袋を持たせてやります。

心配している母親のもとへ跳んで帰った坊やは、間違えてきつねの手を出してしまったけれど、帽子屋さんはこんなにいい手袋をくれたよ、と話します。

母親は呆れながらも呟きます。


ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら

 

★      ★      ★

 

作品内容については、ここで云々するのは控えます。

すでに色んな方が色んな解釈や研究をなさってますので。

 

代わりに、文学作品の絵本化というものについて考えてみます。

 

絵本の制作において、絵も文も同一作者が手掛ける場合と、複数の作者によって役割分担される場合があります。

どちらがいいということはないのですが、やはり後者にはある種の難しさが伴うと思われます。

しかしその一方で、一人では起きなかったような化学反応が起きる楽しみがあるのも後者です。

 

ですがそれも、絵と文それぞれの担当者が話し合って制作を進める場合と、この作品のように作者がすでに故人である場合では、事情が変わってきます。

ましてそれが国民的な文学作品なら、絵本化においては相当な気を使うでしょう。

 

絵本の絵というものは大別すると「文を超えて何かを表現する絵」と「文の説明に踏みとどまる絵」に二分されます。

これもどちらが優れているというものではありませんが、この作品に関しては、黒井さんは後者の立場を取っています。

 

新美さんの格調高い文章を壊さないように、忠実に物語を再現することに努め、テキストにないものは一切登場させていません。

しかしその抑制が、かえって黒井さんの絵の美しさを際立たせています。

 

ぼんやりと光り輝くような淡い輪郭と色彩が、文章の清らかさや柔らかさと絶妙に融合しています。

これもまた、「絵と文の化学反応」の好例だと思います。

 

推奨年齢:10歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

日本語の美しさ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「手ぶくろを買いに

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

E-Mail:book@ehonizm.com

コメント