【絵本の紹介】「子うさぎましろのお話」【206冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

少し早めのオフィスの大掃除やら本棚の整理やらをしていると、家のPCとエアコンが同時に壊れ、妻と息子が同時に風邪を引くという、師走らしいドタバタな日々を送っております。

そんなこんなで、ブログ更新もちょっと滞っていましたね。

 

今回はクリスマス絵本の名作「子うさぎましろのお話」を紹介します。

文:佐々木たづ

絵:三好碩也

出版社:ポプラ社

発行日:1970年1月

 

もともと佐々木さんの童話集にあった一篇を絵本化した作品です。

主人公の「ましろ」は、クリスマスのプレゼントをもっと欲しくて、小さな嘘をついてしまいます。

そこから生まれる「罪の意識」と、それをどう浄化するかの物語。

 

ましろの住む北の国の動物たちは、サンタさんの家が近いこともあり、毎年クリスマスには一番にプレゼントを貰えます。

もちろん、ましろも。

けれど、ましろはもっと何か欲しくなってしまい、あることを思いつきます。

それは、別のうさぎになりすまして、もう一度サンタさんからプレゼントを貰うという策略。

ましろは体にスミを塗り、黒いうさぎに変身して、サンタさんのもとへ。

 

サンタさんはすぐにそれがましろだとわかりましたが、気づかないふりをして、袋に残っていた一粒の種と、自分のサンドイッチをましろに渡します。

うまく行ったことにましろは喜びますが、体のスミを落とそうとしても落ちません。

そこでだんだん自分のしたことを後悔し、罪の意識に震えます。

 

サンドイッチは食べてしまったので、せめて小さな種だけでも神様にお返しするつもりで、モミの木の林の中に、種を埋めます。

雪の中で穴を掘っているうちに、体のスミは落ち、もとの白うさぎに戻っていました。

 

ましろが埋めた種は春になって芽を出し、大きなモミの木に育ちます。

そしてまた12月。

 

ましろのモミの木は、きらきら輝き、おもちゃやお菓子を枝に実らせていたのです。

ましろは驚き、サンタさんに報告に行きます。

そして、去年からの本当のことを全部話します。

サンタさんは優しくましろを撫でてくれます。

 

モミの木のおもちゃや絵本やお菓子は、取っても取っても次々生えてきます。

北の国の動物たちはサンタさんを手伝って、そのクリスマスの贈り物の用意をするのでした。

 

★      ★      ★

 

作者の佐々木さんは緑内障で失明されています。

そのためでしょう、このお話でとりわけ印象的なのは、モミの木から響く「ベルの、すきとおるような ひびき」です。

 

ベルの響きが、「もう すぐ、イエスさまの おたんじょうび」と言っているという表現からは、目の不自由な方に特有の聴覚の繊細さを感じます。

 

さて、子どもは成長過程で、嘘をつくことを覚えます。

もっとたくさんの悪質な嘘をついている大人に、それを責める資格はないでしょう。

 

ところが、大人は自分の子が嘘をついたとわかると、血相を変えて咎めだてたり、どこまでも追い詰めたりします。

それで子どもは自分の身を守ろうと、さらに嘘を重ねてしまいます。

そのうち、何が本当の心なのか、自分でもわからなくなったりします。

 

このお話に登場するサンタさんが素晴らしいのは、ましろの嘘を見抜きながら、それを責めないことです。

何故なら、押し付けられた罪悪感が、子どもの真の成長にとって害悪でしかないことを知っているからです。

 

サンタさんはましろの成長を信じて待つことのできる、本物の大人です。

 

子どもを自由にさせておくと、どんどん悪い方向へ向かってしまうと考えている大人が大勢います。

昔も今も、その数は大して変わってないのかもしれません。

 

しかし、本当の道徳とは、大人が子どもに与えるものではありません。

第一、子どもよりよっぽど汚い私たちが、一体どんな顔で「これが道徳だよ」と示せばいいのでしょうか。

 

子どもは教えられずとも、心の奥に聖なるものを備えています。

子どもだけではなく、すべての人間の内には、「もう一人の自分」がいます。

曇りのない目で内面を覗けば、必ずいます。

そこから響く声は、世の大人たちがもっともらしく諭す道徳などより、遥かに道徳的です。

 

大切なのは、ましろのように子どもが自分でその内奥の声に気づくことです。

その声に従うことがどれほど気分が良く、生命を輝かせることか。

 

大人はすでに、「もう一人の自分」の声を無視することに慣れてしまっています。

でも、せめてクリスマスくらいは、そういう「聖なるもの」の響きを感じようとしてみてもいいのではないでしょうか。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

響きの美しさ度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「子うさぎましろのお話

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「00冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

E-Mail:book@ehonizm.com

コメント