【絵本の紹介】「急行「北極号」」【203冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

早いもので、今年も終わりが見えてきました。

そろそろクリスマス絵本も取り上げていきたいと思います。

 

今回は「急行「北極号」」を紹介しましょう。

作・絵:クリス・ヴァン・オールズバーグ

訳:村上春樹

出版社:あすなろ書房

発行日:2003年11月10日

 

ジュマンジ」と同じく、映画化もされたオールズバーグさんの傑作絵本。

 

≫絵本の紹介「ジュマンジ」

≫絵本の紹介「魔術師ガザージ氏の庭で」

 

私は観ていませんが、映画版のタイトルは原題の「ポーラーエクスプレス」です。

確かに、オールズバーグさんの絵本はどれも映画映えしそうな作品ばかりで、特にこの「北極号」の幻想的シーンの数々を映像化してみたいと思う製作者側の気持ちは理解できます。

 

これまでこのブログで紹介したオールズバーグさんの絵本はどちらもモノクロ作品でしたが、今回はカラー彩色。

抑えた色調ながらも、効果的な美しさを放っています。

凍てつく夜空に舞う雪。

そして光。

 

オオカミのうろつく森の中を一直線に走る「北極号」の印象的なことといったら。

私は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を連想しました。

 

どこか不可解さを残す結末の多いオールズバーグさんの絵本ですが、この作品では、実に心温まるハッピーエンドが描かれています。

 

クリスマスイブの夜中、サンタを信じて鈴の音を待つ少年が体験した、奇跡の物語。

突然家の前に停車した汽車「北極号」に、少年は乗り込みます。

中にはたくさんのパジャマ姿のままの子どもたち。

汽車は北極点を目指して、北へとひた走ります。

 

到着した北極点は大きな町。

ここの工場で、世界中の子どもたちへのプレゼントが作られており、「北極号」に乗った子どもたちの中から、サンタがプレゼント第一号を渡す子どもを選ぶのだと車掌が説明します。

町の真ん中に集まった小人たち。

そしてサンタが姿を現し、少年はプレゼント第一号を渡す相手に選ばれます。

 

何が欲しいかを尋ねられて、少年は、サンタのそりについている銀の鈴が欲しいと言います。

サンタはそれを少年に手渡してくれます。

 

しかし、帰りの汽車の中で少年は、ポケットに穴が開いていて、鈴をなくしてしまったことに気づきます。

がっかりする少年。

でも家に送り届けられ、次の日のクリスマスの朝、妹のサラとともにプレゼントの包みを開けて行くと……。

 

★      ★      ★

 

ラストのページで、小さな鈴のカットとともに、印象的に語られるメッセージ。

サンタの鈴の音は、子どもには聴こえる。

けれど、周りの友達も、妹も、大人になるにつれ、その音を聴くことができなくなっていきます。

しかし、主人公はすっかり大人になってしまった今でも、その音を聴くことができるのです。

 

子どもの頃に持っていた純真さ、物事をありのまま見る目。

そういうものは大人になるにつれ失われていきます。

そうなれば、もう聴こえないもの。

この物語で「鈴の音」と表現されているものは、実は私たちの過ごす日々の中に、たくさん存在しているのではないでしょうか。

 

子どもには見えるもの、聞こえるもの、感知されるもの。

それは確かに存在するのだけれど、知識を身に付けることでそうしたものを否定するようになると、もう感じ取れなくなります。

「大人になる」ことは、そういう意味では「退化」とも言えます。

 

人類の進化を、一人の人間の成熟過程として見てみると、やはり昔の人々のほうが、「目には見えないもの」を感じ取る能力が発達していたように思われます。

それらを迷信や妄信といっしょにして、価値のない幻想だと嘲笑うことは簡単です。

しかし、太古の人々は、現代の科学がいまだに説明できないような文明を残してもいるのです。

 

科学の発展は素晴らしいことだと思います。

でも、だからといって「感性」の領域を軽視する必要はないのです。

子どもの持つ感性を残したまま成長すること。

人類の進化の仕方についても、同じことが言えるのではないでしょうか。

 

大切なものは何なのか。

大人の心にこそ、深いメッセージを残す絵本です。

 

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