【絵本の紹介】「ゆきのひ」【202冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのはキーツさんの「ピーター」シリーズ第一作にあたる「ゆきのひ」です。

作・絵:エズラ・ジャック・キーツ

訳:木島始

出版社:偕成社

発行日:1969年12月

 

以前に紹介した「ピーターのくちぶえ」は、この絵本の続編です。

 

≫絵本の紹介「ピーターのくちぶえ」

 

絵本作りの技法的には「ピーターのくちぶえ」と同じ、コラージュと油彩の合成です。

この絵本が発表された時、シンプルでありながら、その鮮やかさ、美しさに多くの批評家たちが絶賛し、その年のコールデコット賞に選ばれました。

 

ですが、以前の記事でも書きましたが、私はキーツさんが真に優れている点は、子どもの「ありのまま」を捉える描写力だと思っています。

 

ストーリーは実に単純で、ピーターが様々な雪遊びを楽しむ、というもの。

一面に積もった雪を見るピーターの驚きや歓び、好奇心などが、短いテキストの中に本当に初々しく表現されています。

誰もが一瞬のうちに子ども時代に引き戻されるのではないでしょうか。

冷たい雪に触れた指先や、雪の中に足を突っ込んだ時の足裏の感触。

そんなものが生き生きと蘇り、読者はたちまちピーターに同化します。

 

ピーターの取る行動は、子どもなら誰もが必ずやるであろう遊びばかり。
雪の上に足跡を残し、棒切れで木の枝に積もった雪を落とし、雪だるまを作り……。

 

大きい子どもたちの雪合戦に混じりたいという気持ちや、ポケットに詰めて持ち帰った雪が溶けて消えてしまった時の悲しみ。

つくづく、キーツさんが「子どもの目」をそのまま持ち続けていることに感心します。

今日一日、自分が何をしたか、お母さんにすべて話し、お風呂の中で何回も何回も反芻するピーター。

この一日で、確実に自分が成長していることを感じているのでしょう。

 

★      ★      ★

 

目に見えるほどの早さで自分が変化しているという感覚も、大人が忘れてしまっているものです。

だからでしょうか。

純粋そのもののピーターを見るとき、どこか疼くような胸の痛みすら感じてしまうのは。

 

この作品には、「アメリカにおいて、黒人の子どもが主人公になった初めての絵本」という側面があります。

当時はちょうど人種差別撤廃宣言がなされた1960年代。

そういう意味で、この作品を差別と戦い、勝利を収めた象徴として見る向きもあります。

 

ただ、キーツさん自身はことさらに運動的な意識でこの絵本を描いたわけではなさそうです。

彼は晩成型の絵本作家でしたが、このピーターという愛らしい黒人少年はずっと以前から作者の頭の中に住んでおり、それが長い時を経て、この「ゆきのひ」でついに登場するに至ったということです。

 

貧民街で生まれ育ったキーツさんにとって、社会的マイノリティを描くことはごく自然なことだったのでしょう。

確かに、ピーターのどこを見ても、差別と戦うといった悲壮感のようなものは微塵も感じられず、ただただ伸びやかな少年の姿だけが描かれています。

 

自然で、自由な、子どもの目。

それを失わないことこそが、差別や偏見のない社会への道筋なのだと思います。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

読み手の五感に働きかける力度:☆☆☆☆☆

 

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