【絵本の紹介】「ヒッコリーのきのみ」【201冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今年の秋は雨ばっかりでしたね。

あまり外にも出かけられないうちにだんだん寒くなってきて、もう秋が終わってしまう感が。

秋っぽい絵本を紹介できるのも今のうちかもしれません。

 

というわけで、今回は「ヒッコリーのきのみ」を取り上げます。

作:香山美子

絵:柿本幸造

出版社:ひさかたチャイルド

発行日:1985年11月

 

コラージュかと思うような、ふんわりとした毛束感のあるリスの絵。

そして暖かみのある赤。

 

柿本さんの絵は優しさと温もりのある色使いが魅力ですが、この赤や茶は、やっぱり「秋」の物語にこそ合いますね。

 

子りすのバビーが、ヒッコリーの木と交わした約束とは。

 

作者の香山さんは「シートン動物記」をもとにこのお話を書いたそうです。

自然界のルールの不思議さ、尊さ、強さ。

そんなものを感じさせてくれる、なかなかに深い話です。

 

森へヒッコリーの木の実を拾いに行ったバビー。

虫食いの実は避けて、大きい実、小さい実を拾います。

持ち帰った実を、お母さんといっしょに食べます。

残った実は、冬に備えて、地面の中に埋めて隠しておくことにします。

隠し場所をちゃんと覚えていられるか心配するバビーに、お母さんは、

それで いいのよ

と言います。

 

冬が過ぎ、春が来ます。

森に行くと、バビーが隠して忘れてしまったヒッコリーの実から、小さな芽が出ていたのでした。

お母さんは、

それが ヒッコリーの きと りすの やくそく

なのだと、バビーに教えます。

 

この小さな芽が、大きい木に育ち、そしてまたたくさんの実をつけてくれるのです。

 

★      ★      ★

 

柿本さんのイラストの、愛のあること。

バビーの膨らんだ頬とか、毛虫とか、可愛くないものが存在しない。

 

食べ物を地中に隠しておいて、忘れてしまうリスの習性を、単純に「馬鹿だなあ」と思っていましたが、この話を読んで、そこに込められた深い意味を知りました。

 

実際、クルミなどの中には、リスに運ばれることを前提としている種類もあるそうです。

共生とか共存とか、そういうものは本当は自然界にしかなくて、私たち人間が口にしても空疎なだけだと感じてしまいます。

 

自然の不思議さ、強さ、美しさを見ていると、いくら物質文明の中に生きている私たちでも、その背後にある叡智のようなものを感じずにはいられません。

その叡智こそが「神」と呼ばれるものかもしれません。

 

そう考えてみると、自然界の中で人間だけが、この叡智から離れようとしているのがわかります。

しかし、いくら本能を失おうとも、人間もまた自然の一部である事実は変わりません。

子どもを見ていれば、それがよくわかります。

 

人間が自然を破壊し、物質文明を突き進むことに、様々なところから警鐘を鳴らす人々がいます。

多かれ少なかれ、みんなが不安を抱いていることは確かでしょう。

 

私は別に、原始の生活に戻るべきだとは思いません。

戻ろうとしても戻れやしませんし。

ただ、考えること(それは人間にしかできないことです)を放棄すべきではないし、具体的な行動を惜しむべきではないと思います。

「このままの道」を進んでいくと、どうもやばいな、と感じるとすれば、それは人間に残された最後の「叡智」の声なのかもしれません。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

虫食い擬音の独特度:☆☆☆☆☆

 

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