【絵本の紹介】「げんきなマドレーヌ」【188冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「げんきなマドレーヌ」です。

作・絵:ルドウィッヒ・ベーメルマンス

訳:瀬田貞二

出版社:福音館書店

発行日:1972年11月20日

 

パリの、つたの からんだ ある ふるい やしきに

で始まる、世界中で大人気「マドレーヌ」シリーズの第一作。

 

内容に入る前に、まずは作者のベーメルマンスさんについて。

ベーメルマンスさんは1898年オーストリアで生まれます。

6歳の時、父親が愛人と駆け落ちします。

 

この出来事は幼いベーメルマンスさんに少なからぬショックと影響を与えたようですが、かといって彼は父親を恨んでいたわけではなさそうです(後年、再会した父親に支援までしています)。

しかし、母親の故郷ドイツで、ベーメルマンスさんは反抗的で手に負えない子どもとして、周囲を心配させました。

ついには、おじから2つの道を選ぶように宣告されます。

更生施設に入るか、アメリカへ行くか。

 

ベーメルマンスさんは後者を選びました。

 

アメリカへ渡ったベーメルマンスさんは、リッツカールトンホテルで働き始めます。

彼はそこで目にするものをスケッチし、風刺の目を磨きました。

 

やがてアパートの日よけに描いた故郷の風景がメイ・マッシ―という編集者の目に留まり、子どもの本を描くことを薦められます。

そして彼が作った2作目の子どもの本が、この「げんきなマドレーヌ」となり、たちまち大人気となるのです。

パリの寄宿舎に暮らす、12人の女の子の物語。

2れつになって、パンを たべ

2れつになって、はを みがき

2れつになって、やすみました

なにごとにも おどろかない」先生のミス・クラベルに連れられて、「ふっても、てっても」9時半に散歩に出かけます。

 

マドレーヌは12人の中で一番のおちびさんですが、活発な女の子。

でも、ある日の真夜中、マドレーヌが起き上がって目を泣きはらしています。

 

盲腸炎と診断され、救急車で病院に運ばれ、手術を受けます。

 

十日後、お見舞いに来た寄宿舎の女の子たちが見たものは、「おもちゃに キャンデーに にんぎょうのいえ」。

それに、マドレーヌのお腹の手術の傷。

すっかりマドレーヌが羨ましくなってしまった11人は、寄宿舎に戻ってから、夜中にみんなで、

もうちょうを きって、ちょうだいよー

と大声で噓泣きするのでした。

 

★      ★      ★

 

絵が最高に素敵です。

表紙のエッフェル塔の他、各場面においてオペラ座やノートルダム寺院、ルーヴル美術館などのパリの名所が美しく描かれています(巻末に解説付き)。

 

それらと、当時は低く見られていた漫画のシンプルな技法をミックスさせ、多くを語らないリズミカルで詩的な文章で仕上げています。

冗長なセリフを抑制し、短い文と絵のみで必要なことをすべて伝える技術は、絵本としての質そのものに関わってきます。

 

そしてなおかつ、最も重要で難しい「子どもの目で物語る」ことにも、見事なまでに成功しています。

われわれは子どものために書いているんです。幼稚な者にではなく

これは、ベーメルマンスさんが前述の編集者・メイ・マッシ―さんにあてたメモの言葉です。

「マドレーヌ」が世界中の子どもたちに支持されるのも頷けるではありませんか。

 

最後に、ベーメルマンスさんがホテルでボーイをしていた頃のエピソードを紹介します。

彼はいつものようにメニューの裏側にお客の姿をスケッチしていました。

それは非常に滑稽で風刺的で、おまけにとても本人に似ていました。

 

ところが、そのメニューを、接客係がお客当人に見せてしまったのです。

お客は怒り、それがまたホテルの一番の上客であったために、ベーメルマンスさんはホテル経営者のケラー氏に呼び出され、こっぴどく罵られます。

 

しかしケラー氏はその後で、画商の友人2人に例の絵を見せ、

この子には才能があるかね?

と尋ねました。

すると2人は口をそろえて、

あるね

と答えたそうです。

 

ケラー氏はベーメルマンスさんを宴会係に配属し、空いている宴会場をスタジオに使って絵を描くことを薦めました。

ベーメルマンスさんは自叙伝で、このケラー氏を「生涯の恩人」であると書いています。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

12人の識別困難度:☆☆☆☆

 

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