2017.10.04 Wednesday
【絵本の紹介】「ちらかしぼうや」【186冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
子どものお片付け、苦労している方も多いと思います。
私は元来がだらしない人間なので、部屋が散らかっていてもわりに平気なのですが、妻は潔癖ぎみで、雑然とした状態に耐えられない性質です(おかげで結婚してから、ずいぶん教育されました)。
息子が生まれる前に、夫婦で育て方について話し合った時、原則として「自由にさせてやる」方針を固めました。
つまり、少なくとも家の中では、やりたい放題にさせてあげる、ということです。
しかし、私はともかく、妻にそれができるかどうか、少々心配でした。
さて、息子が自分で動けるようになってくると、予想通り、散らかし放題。
おもちゃは箱ごとひっくり返す、壁に落書きする、BOXティッシュは全部引っ張り出す……。
案の定、妻はイライラし出して、「少しくらいは片付けさせよう」と言い出しました。
でも、その「少しくらい」を息子は嫌がります。
大きい箱を用意して、そこに全部入れるだけ、という状態にしてやっても、それすらしません。
息子を見ていると、幼い子どもというものは「お片付け」が「できない」というより「キライ」なのかもしれないと思えてきます。
しかし、もう少し考えてみると、子どもが嫌がっているのは「お片付け」そのものではなく、「片付けようとする大人」の姿なのかもしれません。
いつまでも遊んでいたい気持ちに水を差すような、「終わり」を告げる行為のように思えるのかもしれません。
自分の子ども時代を思い起こしてみれば、私は母親が掃除機をかけ出すと、なんでかわからないけど不快な気持ちになったりしたものです。
さて、今回紹介するのは「ちらかしぼうや」です。
作・絵:ジャン・オームロッド
訳:ほしかわなつこ
出版社:童話館
発行日:2005年9月20日
17×16の小さな絵本です。
翻訳出版されたのは2005年ですが、1985年の作品です。
とても短く、文も少ないので、赤ちゃん絵本と言えますが、これはむしろ大人にオススメします。
散らかった部屋を、お父さんが片付けて行きます。
その後ろから、子どもが次々に片付けたものを散らかして行きますが、お父さんは気づきません。
この手の絵本には珍しく、お母さんが登場しません。
そして片付けをするお父さんは女性的ではなく、ゴリゴリのヒゲ面のおっさんです。
お父さんが片付けたものを散らかして行くぼうやは、明らかにわざとやっていて、時々読者の方を向いて悪戯っぽく笑います。
あるいは、ぼうやの目線の先にはお母さんがいるのかもしれません。
とすると、これはお母さんが見た父子の一場面という体の絵本なのかも。
さて、いよいよラストになって、お父さんはぼうやの悪戯に気づきます。
そして、
「おや おや! なんてことだ。ほんとに、おまえは、ちらかしぼうやだな!」
と怖い顔になります。
さあ、叱られ&反省タイムかと思いきや、ラストのページでお父さんは最高に素晴らしい転換を見せます。
笑顔でぼうやを抱きしめ、
「いいとも いいとも」
「もういちど、さいしょから はじめるさ」
感動!
★ ★ ★
子どもに対し、どう接するべきか。
私にとって、この短い絵本は、そのひとつの手本となっています。
子どもは何度も何度も同じことを繰り返します。
まるで、何かを試しているように。
同じ絵本を、何度でも繰り返して読んでもらいたがり、単純な遊びを何度でも繰り返したがります。
それに対し、一切嫌な顔をせずに応じてあげられるか。
このお父さんのように、「いいとも いいとも」と言えるか。
時々、私は息子に試されているような気持ちになります。
「本当に、無条件に、自分を愛してくれているのか」
と。
「愛されているかどうか」は、子どもにとって何よりも重要なことです。
その確信こそが、長い人生において、生き抜くための礎となるからです。
お父さんに抱かれたぼうやの満ち足りた笑顔は、まさに望むものを手に入れた幸せな表情です。
しかしきっとまた、ぼうやはお父さんを試し始めるでしょう。
何度も、何度でも。
推奨年齢:1歳〜
読み聞かせ難易度:☆
素敵なお父さん度:☆☆☆☆☆
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