【絵本の紹介】「ちらかしぼうや」【186冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

子どものお片付け、苦労している方も多いと思います。

私は元来がだらしない人間なので、部屋が散らかっていてもわりに平気なのですが、妻は潔癖ぎみで、雑然とした状態に耐えられない性質です(おかげで結婚してから、ずいぶん教育されました)。

 

息子が生まれる前に、夫婦で育て方について話し合った時、原則として「自由にさせてやる」方針を固めました。

つまり、少なくとも家の中では、やりたい放題にさせてあげる、ということです。

しかし、私はともかく、妻にそれができるかどうか、少々心配でした。

 

さて、息子が自分で動けるようになってくると、予想通り、散らかし放題。

おもちゃは箱ごとひっくり返す、壁に落書きする、BOXティッシュは全部引っ張り出す……。

 

案の定、妻はイライラし出して、「少しくらいは片付けさせよう」と言い出しました。

でも、その「少しくらい」を息子は嫌がります。

大きい箱を用意して、そこに全部入れるだけ、という状態にしてやっても、それすらしません。

 

息子を見ていると、幼い子どもというものは「お片付け」が「できない」というより「キライ」なのかもしれないと思えてきます。

しかし、もう少し考えてみると、子どもが嫌がっているのは「お片付け」そのものではなく、「片付けようとする大人」の姿なのかもしれません。

 

いつまでも遊んでいたい気持ちに水を差すような、「終わり」を告げる行為のように思えるのかもしれません。

自分の子ども時代を思い起こしてみれば、私は母親が掃除機をかけ出すと、なんでかわからないけど不快な気持ちになったりしたものです。

 

さて、今回紹介するのは「ちらかしぼうや」です。

作・絵:ジャン・オームロッド

訳:ほしかわなつこ

出版社:童話館

発行日:2005年9月20日

 

17×16の小さな絵本です。

翻訳出版されたのは2005年ですが、1985年の作品です。

 

とても短く、文も少ないので、赤ちゃん絵本と言えますが、これはむしろ大人にオススメします。

散らかった部屋を、お父さんが片付けて行きます。

その後ろから、子どもが次々に片付けたものを散らかして行きますが、お父さんは気づきません。

この手の絵本には珍しく、お母さんが登場しません。

そして片付けをするお父さんは女性的ではなく、ゴリゴリのヒゲ面のおっさんです。

 

お父さんが片付けたものを散らかして行くぼうやは、明らかにわざとやっていて、時々読者の方を向いて悪戯っぽく笑います。

あるいは、ぼうやの目線の先にはお母さんがいるのかもしれません。

とすると、これはお母さんが見た父子の一場面という体の絵本なのかも。

 

さて、いよいよラストになって、お父さんはぼうやの悪戯に気づきます。

そして、

おや おや! なんてことだ。ほんとに、おまえは、ちらかしぼうやだな!

と怖い顔になります。

さあ、叱られ&反省タイムかと思いきや、ラストのページでお父さんは最高に素晴らしい転換を見せます。

笑顔でぼうやを抱きしめ、

いいとも いいとも

もういちど、さいしょから はじめるさ

 

感動!

 

★      ★      ★

 

子どもに対し、どう接するべきか。

私にとって、この短い絵本は、そのひとつの手本となっています。

 

子どもは何度も何度も同じことを繰り返します。

まるで、何かを試しているように。

同じ絵本を、何度でも繰り返して読んでもらいたがり、単純な遊びを何度でも繰り返したがります。

 

それに対し、一切嫌な顔をせずに応じてあげられるか。

このお父さんのように、「いいとも いいとも」と言えるか。

 

時々、私は息子に試されているような気持ちになります。

本当に、無条件に、自分を愛してくれているのか

と。

 

「愛されているかどうか」は、子どもにとって何よりも重要なことです。

その確信こそが、長い人生において、生き抜くための礎となるからです。

 

お父さんに抱かれたぼうやの満ち足りた笑顔は、まさに望むものを手に入れた幸せな表情です。

しかしきっとまた、ぼうやはお父さんを試し始めるでしょう。

何度も、何度でも。

 

推奨年齢:1歳〜

読み聞かせ難易度:☆

素敵なお父さん度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ちらかしぼうや

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

E-Mail:book@ehonizm.com

コメント