【絵本の紹介】「11ぴきのねことあほうどり」【181冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

「11ぴきのねこ」シリーズで知られる絵本作家・馬場のぼるさんが生前に描いたスケッチやアイディアを記したノートなどが大量に残されていることが発見され、ニュースになりました。

 

それら創作資料の中には、「11ぴきのねこ」に関する構想や考察も多く含まれていたそうです。

「猫の歴史」について書かれたページには、猫がいつ日本に来たのか、どんな模様の猫が多かったのか、など、文献を調べてわかったことが実に詳細に記述されていました。

 

あの独特のフォルムの「11ぴきのねこ」が、けっして適当に描いたわけではなく、膨大な情報と知識に基いて描かれていることがわかります。

たかが子どもの本、と絵本を侮る人には理解できない真摯な仕事ぶり。

 

今回は馬場さんへの敬意を込めて、「11ぴきのねことあほうどり」を紹介します。

作・絵:馬場のぼる

出版社:こぐま社

発行日:1972年11月10日

 

シリーズ第一作については、以前の記事をご覧ください。

≫絵本の紹介「11ぴきのねこ」

 

大ヒットとなった「11ぴきのねこ」。

ぜひ続編を、と読者や編集者に熱望され、構想に取り掛かったものの、完成までに実に5年を要した苦労作。

 

馬場さんが最初に思い描いたのは、「11ぴきのねこがあほうどりの背に乗って空を飛んでいる」カットだったそうです。

しかし、そこに行き着くまでが出てこない。

 

最終的には表紙のように、11ぴきは気球に乗ることになりました。

 

前作ではいつも腹を空かせたノラネコだった11ぴき。

なんと今作では商売をしています。

11ぴきのねこのコロッケ屋さんは大繁盛。

結構楽しそうに働いています。

売れ残りのコロッケも食べられて、お腹も満足そう。

 

……が、毎日毎日コロッケばかり食べているうちに、11ぴきは、

もう コロッケはあきたよ

おいしい とりのまるやきが たべたいねえ

と言い出します。

 

前回は魚で、今回は鳥というわけです。

とりのまるやき」を思い浮かべている11ぴきの前に、一羽のあほうどりが現れ、コロッケをせがみます。

11ぴきは舌なめずりをしながら、あほうどりをもてなします。

このあほうどり、「3」までしか数えられない上に、11ぴきの下心にも気づかず、

ホー しあわせ、わたしはもう しんでもいい

などと隙だらけなセリフを吐きます。

 

さすが、捕まえ易すぎて絶滅危惧種になったといわれるあほうどり。

前回の巨大魚とはえらい違いです。

 

このあほうどりも11ぴきの胃袋に収まってしまうのか……と思ったら、あほうどりは故郷に兄弟がいることを明かします。

その数、「3ばと 3ばと 3ばと 2わ」。

つまり、「11ぴき」!

 

11ぴきはあほうどりの兄弟にもコロッケをご馳走すると言って、気球に乗り込みます。

やってきた南の島で、11ぴきはあほうどりの兄弟を紹介されますが……。

だんだん大きくなるあほうどり。

最後の「11わあっ」は、入り口を破壊してしまうほどの巨大さ。

 

11ぴきは「とりのまるやき」にありつくどころか、あほうどりたちのためにひたすらコロッケを作り続けるハメになってしまうのでした。

 

★      ★      ★

 

映画などでも、ヒット作が出ればすぐにシリーズ化の流れになりますが、どの世界でも二番煎じは難しいもの。

1作目の出来が良ければ良いほど、2作目でそれをさらに超えるのが困難になります。

設定だけを受け継ぎ、かえって自由な発想を制限され、ほとんどの場合、シリーズ2作目は駄作となりがちです。

 

馬場さんがそうした難しさに正面から向き合ったからこそ、この「11ぴきのねことあほうどり」は完成までに5年もかかったのでしょう。

こぐま社の創業者である佐藤英和さんと馬場さんは何度も打ち合わせを繰り返し、悩み抜き、苦しみ抜いて、もう「11ぴき」はやめようという話にまでなったそうです。

 

そうした日々の末に馬場さんは「だんだん大きくなる」というアイディアを閃き、数を数えられないあほうどりと組み合わせて、あの越えがたい「11ぴきのねこ」のラストシーンに勝るとも劣らぬクライマックスに辿り着いたのです。

うちの息子も、「11わあっ」のシーンが大好きです(このページを書き写して壁に飾るほど)。

 

どうせ子ども用の本なんだから」そこまで悩まなくてもいいじゃない、という大人もいるでしょう。

 

けれど、馬場さんは子どもの本だから「こそ」、一切の手抜きや妥協を認められなかったのです。

大人相手なら騙せるんだけどねえ。子どもは騙せないからなあ

生前、馬場さんはそんな風に語られていたそうです。

 

子どもの本を作ること、子どもを楽しませることの難しさを誰よりも知っていた馬場さん。

その一方で、本当に面白いものを作れば、子どもは必ずそれを選んでくれるのだということも知っていた馬場さん。

 

誕生から50年経った今でも、馬場さんが生み出した「11ぴき」は子どもに支持され続けています。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

あほうどりの無警戒度:☆☆☆☆☆

 

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