2017.09.12 Tuesday
【絵本の紹介】「きつねのかみさま」【179冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
絵本にはたくさんの動物が登場します。
むしろ、人よりも動物の方が多いんじゃないかと思います。
中でも人気はねずみ、ぞう、くま、うさぎ、ねこでしょうか。
彼らが主役を務め、脇を固めるのがいぬ、ぶた、たぬき、きつね……というパターンが多い気がします。
もちろん、その他の動物絵本もたくさんありますけどね。
しかし、きつねというのは、あまり主役を張らせてもらえないばかりか、昔話などではたいてい悪役、もしくはちょっと狡猾なキャラクターを割り当てられることが多い不憫な動物です(悪役から主役にのし上がったゾロリみたいなのもいますが)。
同じグループに属するはずのたぬきは、わりと好意的に描かれることが多いので、なおのこと不公平感はぬぐえません。
海外でもそのあたりの事情は変わりませんが、あちらでは単なる「嫌われ者」のきつねですが、日本では忌み嫌うと同時に畏怖の対象でもあり、お稲荷さんのように神様の使いとも考えられています。
今回紹介する「きつねのかみさま」は、私はそのタイトルからして、最初は地方民話的なお話かと思ったものです。
作:あまんきみこ
絵:酒井駒子
出版社:ポプラ社
発行日:2003年12月
予想はまったく外れでした。
おどろおどろしいところは一つもなく、とっても優しい気持ちになれる素敵な物語です。
きつねも可愛いし。
作者のあまんさんは、児童文学作家として数々の名作を生み出し、その中には教科書採用され、世代を超えて読み継がれている作品も多いです。
あまんさんの作品は常に過不足がなく完成されており、その文章は物凄く上品で、教科書用に好まれるのも頷けます。
その一方、「教科書作品」のイメージが強いために、どこか古風な定型の童話という先入観を持ってしまう大人の読者もいるかもしれません。
そうしたイメージを、酒井さんの現代的で洗練された絵が一掃しています。
これはなかなかの名タッグかもしれません。
実際、文だけを追うと昭和的な匂いもするのですが、冒頭の「りえちゃん」の家のカットだけで、一気に「今のお話」と思えてしまうのだからすごい。
今や「大人女子にも読まれる絵本」と言えば必ずその名前が挙がる酒井さん。
きつねの可愛さは、彼女の画力に依るところも大きいです。
前置きが長くなりましたが、内容に入ります。
なわとびの紐を公園に忘れたことを思い出したりえちゃん(文中では「あたし」の一人称)は、急いで取りに戻ります。
弟のけんちゃんもついてきます。
公園に来ましたが、紐は見つかりません。
その時、楽しそうな笑い声や歌声が聞こえてきて、覗いてみると、子ぎつねたちが縄跳びをしています。
きつねたちに誘われて、りえちゃんたちも縄跳びに加わります。
きつねに跳び方を教えてあげたりして、楽しく遊びます。
そこでりえちゃんは、縄跳びの取っ手に書かれた自分の名前に気づき、これが自分の忘れて行った紐であることを知ります。
遊び終わって帰る時、りえちゃんが紐が自分のものであることを言おうとすると、小さい子ぎつねが得意そうに、
「それ、あたしのよ」
と言います。
縄跳びがしたいと「きつねのかみさま」にお祈りしていたら、その紐が木の枝にかけてあったのだ、と言うのです。
そしてその証拠に、自分の名前まで書いてあることを示すのです。
なんと、この子ぎつねも「りえちゃん」だったんですね。
りえちゃんは何か言おうとする弟を慌てて遮り、きつねたちにさよならします。
帰り道で、けんちゃんは笑って、
「そうかあ。おねえちゃんは、きつねのかみさまだあ」
と言います。
子ぎつねのりえちゃんの嬉しそうな顔を思い出して、りえちゃんも一緒に笑います。
★ ★ ★
縄跳び遊び。
今の子どもたちも、やるんですかね。
公園に行っても、あまりそういう遊びを見かけなくなった気がします。
公園でまで電子ゲームに興じてたり。
「おおなみ こなみ ぐるっと まわって きつねのめ」
で、「ねこのめじゃ ないの?」というくだり、通じるんでしょうか。
でも、通じないからやめとこう、ではなく、昔ながらの遊びはどんどん絵本に登場させて欲しいと思います。
そこから興味を持つ子どもたちが出てくるでしょうから。
いくら絵本が時代とともに進化するものだとしても、私としては、絵本の中にまで電子ゲームを持ち込んで欲しくはないのです。
古いかもしれませんけど。
酒井駒子さんの他の記事≫絵本の紹介「ぼく おかあさんのこと・・・」
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
仲良し姉弟の微笑ましさ度:☆☆☆☆
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