2017.09.11 Monday
【絵本の紹介】「にこにこエマ」【178冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回はスウェーデンから来た可愛い絵本「にこにこエマ」を紹介します。
作・絵:グニラ・ヴォルデ
訳:椿原奈々子
出版社:童話館
発行日:2007年2月
17×16センチくらいの、小さな絵本です。
「エマ」という女の子が主人公。
他に、「ピーター」という男の子が主人公の関連作もあります。
ストーリー仕立てではなく、ただいつものエマの様子をありのままに描いただけの絵本です。
しかしそれは、子どもというものの「ありのまま」の姿でもあります。
淡々とした描写の中に、世の親たちが自分の子を見ているような気持ちにさせられるような、普遍的な力があります。
重い障害を絵本の読み聞かせによって救われたクシュラさんも、この絵本が大好きだったそうです。
「いつもは、エマは あしに ズボンを はきます」
「でも、ときには、あたまに ズボンを かぶりたくなります」
左のページには「いい子」の時のエマ。
右のページには、時折姿を現す、いたずらで利かん気なエマが描かれます。
読んでいくうちに、不思議と子どもに対して寛容な気持ちになってきます。
子どもを「そういうもの」として受け入れ、認めることができるようになるのです。
★ ★ ★
左のページだけを追って読んでみると、ただいい子なエマの日常絵本として読めます。
そういう絵本は実際にあるし、絵も可愛いので、特に違和感なく読めたりします。
しかし、それは子どもに「こうあって欲しい」という、大人側の願望であって、子どもの方ではエマに親近感を持つことは少ないでしょう。
かつて絵本が教材的に捉えられてた時代においては、そうした模範的な子どもだけしか登場しない絵本が多くありました。
でも、現実の子どもは、そんなにいい子ではありません。
彼らはまだ感情のコントロールが未熟だし、自己中心的だし、理性が未発達で、衝動的です。
しかしそれは大人にとっては眉をひそめる性質であっても、「悪」と呼ぶようなものではありません。
ただ、「そういうもの」なのです。
そしてそれらの幼児性は、自然な成長とともに消えていきます。
が、たまに幼児性を克服できず、そのまま大人になってしまった人間も見かけます。
そうなると、同様の特徴でも、これはとても見るに堪えない醜悪な性質になります。
ゆえに、子どもが幼いうちから「しっかりとしつけ」ることが大切、とやかましく言う大人たちが増えるわけです。
しかし、そういう「しつけ」は、行う側によっぽどの注意深さと反省力と観察力が伴わなければ、単なる抑圧に終わってしまう危険性が大です。
「厳しいしつけ」のつもりが、条件反射的に怒っているだけだったり、ただもう「自分の意にそぐわない」ことを子どもがした瞬間に𠮟りつけたり。
「信じて、待つ」ことはとても難しいことです。
そして「待つ」とは何もしないで放置することではありません。
焦らずに子どもの成長を見極め、その場その時に相応しい方法で適切に対応することです。
マニュアルがあるわけでもありません。
大人だって完璧なわけじゃないから、疲れてしまうし、イライラしてしまうこともあるでしょう。
そんな時に、手に取って欲しい一冊です。
推奨年齢:2歳〜
読み聞かせ難易度:☆
共感度:☆☆☆☆☆
■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「にこにこエマ」
■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧」
■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。
■絵本の買取依頼もお待ちしております。
〒578−0981
大阪府東大阪市島之内2−12−43
E-Mail:book@ehonizm.com