【絵本の紹介】「ぶたのたね」【176冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は佐々木マキさんの「ぶたのたね」を紹介します。

作・絵:佐々木マキ

出版社:絵本館

発行日:1989年10月

 

佐々木さんをこのブログで取り上げるのは二回目。

 

≫絵本の紹介「ねむいねむいねずみ」

 

前衛漫画家出身で、児童書の挿絵の仕事をしたことがきっかけで絵本作家に転身、アナーキーとも言われる作風ながら、子ども受けもよく、次々とヒットを飛ばしました。

天才肌の作家という印象が強いのですが、作品に対しては真摯で勉強熱心で、色々な児童文学作家から物語の作り方を学んだそうです。

 

この「ぶたのたね」は、絵本作りに慣れてきた作者が、純粋に「面白いもの」を、描きたいように描いたといった物語です。

 

主人公のおおかみは、走るのがとても遅く、ぶたを捕まえることができません。

ぶたたちも、そんなおおかみを少しも怖がらず、余裕で逃げながら「ここまで おいで、あっかんべー」とからかう始末。

 

悔し涙をこぼすおおかみの前に、「きつねはかせ」が現れます。

一度でいいから腹いっぱいぶたを食べてみたい、というおおかみに、きつねはかせが渡したものは……。

なんと、「ぶたのたね」。

 

これを地面に撒いて成長促進剤をかければ、ぶたの木が育ち、ぶたの実が生るというのです。

 

おおかみが半信半疑ながらも言われたとおりにすると、一週間ほどして、本当にぶたの木にぶたの実がたわわに実ります。

驚喜するおおかみでしたが、そこに……。

何故かぞうの群れが地響きたてて走ってきます。

きょうは ぞうの マラソンたいかいの日」。

 

ぶたの実は全部下に落ちてしまい、逃げ出してしまいます。

 

がっかりするおおかみ。

しかし一匹だけ、落ちた時に気を失っているぶたを見つけます。

 

ともかく一匹でも、生まれて初めてぶたの丸焼きが食べられることにわくわくしながら、おおかみが火を起こしていると、ぶたは目を覚ましてしまいます。

ぶたは暴れて、抑えようとしたおおかみは自分で起こした火をしっぽに付けてしまい、熱さに飛びあがっている間にぶたは逃走。

 

それでもおおかみは「こんどこそ!」と、懲りずにぶたのたねを埋めて、薬をかけているのでした。

 

★      ★      ★

 

不思議な読後感と難解なイメージのデビュー作「やっぱりおおかみ」に登場するシルエットおおかみに比べ、同じおおかみでもこの絵本の主人公は随分と間抜けで、詰めが甘くて、親しみやすい。

その親しみやすさは物語そのものにも通じます。

 

ぶたの木にぶたの実が生るさまはシュールそのものですが、ただ単純に笑えます。

私はどこかで佐々木さんの作品に「怖さ」や「狂気」を感じてしまう読者なのですが、この作品に限っては、そういう印象は皆無でした。

 

それは物語の馬鹿馬鹿しさも然ることながら、主人公のおおかみのキャラクターに依るところが大きいと思います。

 

「ダメな子ほどかわいい」の典型みたいなおおかみ。

やることがいちいち甘くて、でも本人は一生懸命で、ぶたに馬鹿にされて涙を浮かべる姿にはつい同情心を誘われます。

 

なにより、最後の「こんどこそ!」の姿がいい。

努力の方向もちょっと違うし、絶対また失敗することが見えてるんだけど、心のどこかで応援してしまいます。

 

この作品はシリーズ化され、「また ぶたのたね」「またまた ぶたのたね」と続きます。

先の読めないシュール・ナンセンスな展開は変わりませんが、それでも安心して楽しめるのは、「必ず、最後におおかみが失敗する」ことだけは予想できるから。

 

それをわかった上で、やっぱり「がんばれ!」と思って読んでしまうんですね。

 

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