2017.09.04 Monday
【絵本の紹介】「ガラスめだまときんのつののヤギ」【175冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介するのは海外の民話絵本なのですが、ベラルーシという、日本ではちょっと馴染みの薄い国の民話です。
それを「あの」スズキコージさんが挿絵担当しているのですが、彼の絵本としては初期のもので、これまた珍しくコラージュ(切り絵)の手法を用いています。
そういう珍しい要素が様々集まって化学変化を起こしたような作品なんですが、これが実にうまく調和して、良質な絵本に仕上がっております。
それがこの「ガラスめだまときんのつののヤギ」です。
作:ベラルーシ民話
訳:田中かな子
絵:スズキコージ
出版社:福音館書店
発行日:1988年5月31日
コラージュでもスズキさんの独特のタッチは健在です。
見てください、この表紙の堂々たるヤギの佇まい、目力。
「ガラスめだま」と「きんのつの」を持つ、やたらカッコイイヤギで、その迫力はかの名作「3びきのやぎのがらがらどん」の大きいやぎを彷彿とさせます。
日本だとヤギって、大人しくて、弱々しくて、ちょっと頭悪い(手紙食べちゃったり)イメージが持たれているように感じますが、北欧やロシアの辺りでは、こういう猛々しいヤギが生息しているのでしょうか。
さて、一体どんなヤギなのかと、ワクワクしながら読んでみると……。
めっちゃヤクザもんです。
おばあさんが丹精込めて育てた麦畑を、我が物顔で踏み荒らし、おばあさんが、
「でていけったら でていけっ! むぎばたけから でていけっ!」
と怒鳴ると、逆に凄まじい啖呵を切り返します。
「よけいなおせわだ、おいぼればあさん! おいらにゃ、ガラスめだまと きんのつのがある。ひとつきすれば、いちころさ!」
おばあさんは泣きながら歩いて行きます。
そして、大きなクマと出会い、わけを話すと、クマはヤギを追い出してやろうと請け合います。
クマはヤギの前に立ち、「でていけったら でていけっ!」。
でも、ヤギが凄むと、口ほどにもないクマは逃走してしまいます。
以後、絵本の定型である「繰り返し」モードに突入。
次々と動物たちがヤギを追い出そうとしますが、みんなヤギの迫力に押されて逃げ出してしまいます。
このお話が面白いのは、登場する動物が、クマ→オオカミ→キツネ→ウサギとだんだん小さくなっていくこと。
また、ボキャブラリー豊かなヤギは、相手ごとに切れ味鋭い啖呵を切ります。
「もじゃげのクマめ!」
「おんぼろおっぽのオオカミめ!」
「ずるギツネめ!」
「もぐもぐウサギめ!」
と、読者を飽きさせません。
そして、最後に登場するのは小さな一匹のハチ。
ハチだけは啖呵など切らずに、黙ってヤギの鼻に一撃を喰らわせます。
勝負あり。
やっぱり喧嘩は口を利く前に先手必勝、ということでしょうか。
★ ★ ★
小さいものが大きいものをやっつける、定番と言えば定番の民話ですが、上記の通り、文も絵も独特で、非常にテンポよく読めます。
スズキさんのコラージュには、ちょっと変わった材料があれこれ使われていて、題字には毛羽立った紐(?)、おばあさんのスカートの柄には宇宙の写真、ところどころに英字新聞など。
それにしても、ほとんど神々しいまでに強そうだったヤギですが、実際には口だけだったのがなんとも。
その点、やはり絵本界の最強ヤギの座は「がらがらどん」に譲るしかないようです。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
表紙と裏表紙の落差度:☆☆☆☆☆
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■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧」
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