【絵本の紹介】「リサ ジャングルへいく」【172冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

夏休み=8月31日まで。

と、漠然と思い込んでいたんですが、昨今はそうでもないようで、今日が2学期の始業式という小学校も結構あるみたいですね。

世知辛い世の中ですな。

 

大人になってしまうと一か月なんてあっという間ですが、子どもにとって一か月以上の夏休みはとても長く、大きな意味を持ちます。

目まぐるしい心身の成長もあり、新学期に久しぶりに会う友達なんて、ほとんど別人のように変化している(実は自分が変化していたり)ような気になるものです。

 

夏休みが終わってしまう寂しさと、久しぶりに友達に会える嬉しさ、それぞれの休み中の出来事を語り合う楽しさ……。

あの新学期特有の空気は、大人になるともう味わえない種類のものです。

 

今回紹介するのは大人気「リサとガスパール」シリーズより、「リサ ジャングルへいく」です。

文:アン・グットマン

絵:ゲオルグ・ハレンスレーベン

訳:石津ちひろ

出版社:ブロンズ新社

発行日:2002年11月

 

夫婦による合作で、世界中で人気を集めている「リサガス」。

以前「リサとガスパールのクリスマス」を紹介しました。

 

≫絵本の紹介「リサとガスパールのクリスマス」

 

作品ごとにリサ視点・ガスパール視点を入れ替えて語られます。

今回はリサの物語。

 

新学期。

夏休みどこにも行かなかったリサは、ガスパールがヨットの写真をみんなに見せているのを(「ガスパール うみへいく」のエピソードですね)羨ましく思います。

 

そこで思わず、「わたしは ジャングルに いったの」と口走ってしまいます。

みんなに注目されて、リサは調子に乗ってホラ話を続けます。

ありませんでしたか、こんなこと?

私はよくありました。

 

みんなが自分の話を聞いてくれるのが嬉しくて、ついつい話を盛ってしまうという状況。

「嘘だよ」と白状して笑い話にしてしまえば済むのに、幼さゆえにそれができない。

 

こういうのは、バレないギリギリのラインの見極めが重要なのですが、リサのホラはスケールが大きすぎ。

ジャングルでヒョウの飼育をしているおじさん、高い木のてっぺんにある家、ゴリラの出迎え、ゾウに乗ってのお出かけ。

ワニの背中を渡り、ピラニアのいる湖を越えて、ヒョウの世話をしに行きます。

リサは完全にノリノリですが、こういう時に必ず、聴衆の中に一人、冷静なヤツがいるんですよ……。

 

突っ込んだのはクラスメイトのバスティアン。

リサのはなし ぜったいに おかしいよ!

ジャングルにいってたわけないさ

だって うちのちかくのプールで いつもおよいでたじゃないか!

 

ひゃー。

嘘がばれそうになって焦るリサですが、今度は動物園でたくさん証拠写真を撮ろうという、姑息な隠蔽手段を思いつくのでした。

 

★      ★      ★

 

キャラクターの可愛らしさが注目される「リサガス」ですが、絵本としての質を問う評論はあまり見かけません。

でも、私は結構好きです。

教訓臭くならないところが、特に。

 

嘘は良くないことを、ちゃんと伝えて欲しい」などという親の意見があるかもしれませんが、リサがペナルティを受けたところで、子どもは喜びません。

 

もちろん、嘘はいけません。

しかし、子どもがちょっとした見栄からポロッとついてしまう嘘を、とことん追求し、逃げ場を奪い、糾弾するようなことは、子どもの成長にとっては決して有益ではないと思います。

 

どうにかして子どもに「罪の意識」を持たせよう、という教育を行っている人を見かけますが、私はむしろ逆で、どうすれば子どもが「罪の意識」に苛まれずに成長できるか、と考えています。

幼いうちから「罪悪感」を植え付けることは、様々な可能性を摘みかねないと思うからです。

 

リサは子どもそのものですが、「いい子」ではありません。

そういう子どもの分身体としてのキャラクターの失敗や恥は、子どもにとっては「救い」なのです。

 

「こういうことをしてしまうのは、自分だけじゃない」と思うことで子どもは「ホッ」とし、そして心を閉ざしたり強張らせたりする危険を回避して、正しく己を見つめ直すきっかけを掴めるのです。

 

作者はちゃんとそういうことを理解しています。

大人にも受ける可愛らしいキャラクター性はあっても、大人に媚びた絵本ではないのです。

 

見返しや扉絵にもちゃんと意味があり、絵本の面白さというものをきっちり抑えた良作です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

リサの即興力度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「リサ ジャングルへいく

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

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