2016.10.25 Tuesday
絵本の紹介「あんぱんまん」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
我が家では、滅多にテレビをつけません。
別に見たいものがないということもありますが、子どもが2歳くらいになるまでは、液晶画面を見せるのはやめようと思っていたからです。
やはり、テレビの音や光は、赤ちゃんには刺激が強すぎると思うのです。
赤ちゃんが、圧倒的な情報量のテレビ画面に釘付けになるのは当たり前です。
それを、「喜んでいるから」「楽だから」と、テレビやスマホに子守りをさせるという風潮は少し心配です。
赤ちゃんの健全な五感の発達という面から考えれば、静かな部屋で抱っこしながら絵本を読み聞かせる以上の仕事を、電子機器が代わってくれるとは思えません。
今回紹介するのは、アニメ版とはかなり違う、原作絵本としての「あんぱんまん」です。
大人気ですよね、アンパンマン。
ですが、初期の絵本とアニメキャラクターとしてのアンパンマンには、ずいぶんと相違があります。
これは「アンパンマン」シリーズの第一作ですが、何が違うといって、この頭身。
背、高い。
このボディにアンパンの顔が乗っかっている姿は、シュールの一言。
これで首が無くなったら、ただのホラー絵にも見えてしまう。
でも、ちゃんと縮みます。
まだ「ばいきんまん」も、ほかのパン仲間も登場しません。
ただ、あんぱんまんがお腹を空かせた人々に「さあ、ぼくのかおを たべなさい」と迫るだけ(結構怖い)のおはなし。
ジャムおじさんにも名前がありません。
アニメ版は、原作の持つこのシュールさや、あんぱんまんの飄々としたキャラクターが失われていて、個人的には好きではありません。
あんぱんまんは単なる良い子の正義の味方ではありません。
そこには、本来、作者のやなせさんの「正義」に対する考えが込められていたはずなのです。
戦争で従軍体験したやなせさんは、「正義」の裏にある暴力性を痛感し、単純な「正義」という言葉を疑問視するようになっていました。
やなせさんは、普遍的な「正義」とは、「ひもじいものに食べ物を分け与える」行為だと考えました。
そして、自ら体を張ってその「正義」を代行するヒーローとして、「あんぱんまん」が誕生したのです。
仕方のないことかもしれませんが、アニメ版からはそういう背景は一切感じられませんし、商業的に、子どもが喜びそうなことを詰め込んだ作品になっています(それが悪いとは思いませんが)。
アニメの「アンパンマン」で育った子どもは、この絵本を見てどう感じるでしょうか。
「なにかちがう」と敬遠するでしょうか。
けれど、いつの時代も、子どもの目は確かです。
本当にすぐれた絵本は、必ず正当な評価を受け、選ばれ、読み継がれていくものだと思います。
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アンパンマンの第1作目は、とてもいいですね。
いい本を紹介してくれて、嬉しいです