【絵本の紹介】「ゆめ」【168冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はキーツさんの「ゆめ」を紹介します。

作・絵:エズラ・ジャック・キーツ

訳:木島始

出版社:偕成社

発行日:1976年9月

 

「ピーター」の絵本で人気のエズラ・ジャック・キーツさん。

しかし、この絵本は同じニューヨークの下町を舞台にしていながら、おなじみのピーターが登場しません。

 

≫絵本の紹介「ピーターのくちぶえ」

 

キーツさんの絵本の中ではあまり知られておらず、現在は絶版で、希少な作品です。

けれども、「ピーター」シリーズとはまた違った技法での表現は幻想的で美しく、魅力的な仕上がりになっています。

キーツさんのファンの方には、ぜひ一度は読んでみて欲しい一冊。

 

主人公はロベルトという男の子。

彼が学校で作った「かみねずみ」を、アパートの同じ階に住むエイミーに見せます。

この独特の空の描き方はマーブリングという技法です。

 

アパートの一室一室に光と色でドラマが紡がれ、それがこの絵本のサブ・ストーリー的役割を果たしています。

それぞれの部屋の住人が眠ると灯りは消え、夢を見始めると、それが前述のマーブリングによって幻想的に表現されます。

 

しかし、ロベルトの部屋だけは色がなく、彼が寝付けずにいることがわかります。

どうしても眠れずに、ロベルトが窓の外を見ると、アパートの下にアーチ―の猫がいて、大きな犬に追い込まれています。

 

なんとか助ける方法はないかとロベルトが思案したとき、窓辺に置いてあった「かみねずみ」が下に落ちます。

アパートの外壁に映った「かみねずみ」の影は、「かみねずみ」の落下に伴って巨大に膨れ上がり、その大きさに驚いた犬は逃げて行ってしまいます。

安心したロベルトは眠りにつき、次の朝、みんなが起きた後も、まだ夢を見ていました。

 

★      ★      ★

 

タイトルは「ゆめ」ですが、ストーリーは現実の出来事を語っています。

もしかすると、かみねずみの活躍はロベルト自身の夢を表現しているのかもしれませんが、キーツさんがこの絵本でやりたかったことは、やっぱりアパートの住人それぞれの「ゆめ」を絵によって現す手法でしょう。

 

下町で暮らす人々の、それぞれの生活や想いが、色とりどりの模様に渦巻いています。

下町の暮らしの温かさのようなものが伝わってきます。

 

かみねずみ」の作り方はカバーに紹介されていて、誰でも作れる簡単なものです。

また、キーツさんはこの絵本を、日本で関わった方々に向けてささげています。

キーツさんの日本への親愛の情も感じることのできる作品です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

マーブリングの不思議さと楽しさ度:☆☆☆☆☆

 

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