2017.08.04 Friday
【絵本の紹介】「ひろしまのピカ」【167冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
1945年8月6日、人類が初めて原子力爆弾を落とし、落とされた日。
その時の様子を記録した絵本を紹介します。
「ひろしまのピカ」。
作・絵:丸木俊
出版社:小峰書店
発行日:1980年6月25日
私が子どものころ、様々な形で「戦争の悲惨さ」を説かれました。
中でも、あまりの恐ろしさに気が変になりそうだったのは、「ピカドン」と称される原爆の話でした。
目玉が飛び出し、皮膚が灼け崩れ、水を求めて彷徨う人々の群れ。
その地獄は確かに存在し、そしていつ我が身に降ってくるかわからない。
あの頃、私は果てしない恐怖と無力感を持って空を見上げていました。
この絵本も、子どもの私はとても読むことができず、表紙絵を見ただけで吐き気を覚えて目を背けたものです。
大人になってから改めて読んでみても、その内容は非常にリアルで凄惨です。
7歳のみいちゃん。
一家の団欒を突如として崩壊させたのは、原爆の強烈な光線でした。
炎の中、逃げ惑う人々。
死んだ赤子を抱く母親。
翼の燃えたつばめ。
折り重なる死体。
みいちゃんは4日間もお箸を握ったままでした。
指が離れないのです。
髪をかき分けると、ガラスの破片が出てきます。
そして、身体の成長は7歳のまま止まってしまいます。
残酷すぎる現実を描き続けた最後の一文が胸に刺さります。
「ピカは、ひとがおとさにゃ、おちてこん」
★ ★ ★
そんなに昔の話ではないのです。
この非人間的状態は、この日本で、実際に起きたことなのです。
「忘れてはいけない」
と、多くの人々が戦争の無残さ、愚かしさ、原爆の恐ろしさ、非道さを説いてきました。
しかしそれでも、人はこの現実を遠い世界のことのように、記号化して考えるようになっていってるのではないでしょうか。
日本は核兵器禁止条約に「反対」しました。
これがこの国の現状なのです。
この問題を考えるとき、私は行き場のない怒りを覚えます。
それは大人に対する怒りです。
戦争を起こすのは大人であり、武器を作るのは大人であり、それを罪のない子どもに向けて使用するのも大人です。
アメリカは北朝鮮の核開発を批判しているけれど、自分は核を手放すつもりはありません。
そして日本はその姿勢を支持している。
そういう大人の身勝手を、ごまかしを、子どもは見ているのです。
一体どの口で、「戦争はいけないよ」と子どもに言うつもりなのでしょうか。
この絵本は、大人こそが読むべきです。
子どもは何も悪くありません。
いつだって、悪いのは大人なのです。
大人の醜悪さは、想像力の欠如という形を取って現れます。
ここに描かれている惨状を、慟哭を、苦痛を、悲嘆を、現実のものとして感じることのできない想像力の貧しさが、過ちを繰り返させるのです。
自分で自分のことを「リアリスト」だと思っている大人たちが、その空疎な想像力で描いた「戦争状態」を、まるで待ち望んでいるかのような言動を取るのです。
我々親にできることは、そういう大人をこれ以上増やさないことです。
とりあえず、私は家に帰って子どもに絵本を読んであげることにします。
推奨年齢:9歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆
重さ度:☆☆☆☆☆
■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ひろしまのピカ」
■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧」
■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。
■絵本の買取依頼もお待ちしております。
〒578−0981
大阪府東大阪市島之内2−12−43
E-Mail:book@ehonizm.com