【絵本の紹介】「ひろしまのピカ」【167冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

1945年8月6日、人類が初めて原子力爆弾を落とし、落とされた日。

その時の様子を記録した絵本を紹介します。

ひろしまのピカ」。

作・絵:丸木俊

出版社:小峰書店

発行日:1980年6月25日

 

私が子どものころ、様々な形で「戦争の悲惨さ」を説かれました。

中でも、あまりの恐ろしさに気が変になりそうだったのは、「ピカドン」と称される原爆の話でした。

 

目玉が飛び出し、皮膚が灼け崩れ、水を求めて彷徨う人々の群れ。

その地獄は確かに存在し、そしていつ我が身に降ってくるかわからない。

 

あの頃、私は果てしない恐怖と無力感を持って空を見上げていました。

 

この絵本も、子どもの私はとても読むことができず、表紙絵を見ただけで吐き気を覚えて目を背けたものです。

 

大人になってから改めて読んでみても、その内容は非常にリアルで凄惨です。

7歳のみいちゃん。

一家の団欒を突如として崩壊させたのは、原爆の強烈な光線でした。

炎の中、逃げ惑う人々。

死んだ赤子を抱く母親。

翼の燃えたつばめ。

折り重なる死体。

みいちゃんは4日間もお箸を握ったままでした。

指が離れないのです。

 

髪をかき分けると、ガラスの破片が出てきます。

そして、身体の成長は7歳のまま止まってしまいます。

 

残酷すぎる現実を描き続けた最後の一文が胸に刺さります。

ピカは、ひとがおとさにゃ、おちてこん

 

★      ★      ★

 

そんなに昔の話ではないのです。

この非人間的状態は、この日本で、実際に起きたことなのです。

 

「忘れてはいけない」

と、多くの人々が戦争の無残さ、愚かしさ、原爆の恐ろしさ、非道さを説いてきました。

 

しかしそれでも、人はこの現実を遠い世界のことのように、記号化して考えるようになっていってるのではないでしょうか。

 

日本は核兵器禁止条約に「反対」しました。

 

これがこの国の現状なのです。

 

この問題を考えるとき、私は行き場のない怒りを覚えます。

それは大人に対する怒りです。

 

戦争を起こすのは大人であり、武器を作るのは大人であり、それを罪のない子どもに向けて使用するのも大人です。

 

アメリカは北朝鮮の核開発を批判しているけれど、自分は核を手放すつもりはありません。

そして日本はその姿勢を支持している。

 

そういう大人の身勝手を、ごまかしを、子どもは見ているのです。

一体どの口で、「戦争はいけないよ」と子どもに言うつもりなのでしょうか。

 

この絵本は、大人こそが読むべきです。

子どもは何も悪くありません。

いつだって、悪いのは大人なのです。

 

大人の醜悪さは、想像力の欠如という形を取って現れます。

ここに描かれている惨状を、慟哭を、苦痛を、悲嘆を、現実のものとして感じることのできない想像力の貧しさが、過ちを繰り返させるのです。

 

自分で自分のことを「リアリスト」だと思っている大人たちが、その空疎な想像力で描いた「戦争状態」を、まるで待ち望んでいるかのような言動を取るのです。

 

我々親にできることは、そういう大人をこれ以上増やさないことです。

 

とりあえず、私は家に帰って子どもに絵本を読んであげることにします。

 

推奨年齢:9歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆

重さ度:☆☆☆☆☆

 

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