2017.07.28 Friday
【絵本の紹介】「ゆうちゃんのみきさーしゃ」【164冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回は「のりもの絵本」でありながら「たべもの絵本」としての要素も兼ね備えた一冊を紹介します。
「ゆうちゃんのみきさーしゃ」です。
作:村上祐子
絵:片山健
出版社:福音館書店
発行日:1999年4月10日(こどものとも傑作集)
出版は1999年ですが、初出は月刊「こどものとも」1968年7月号ですから、わりと古い作品です。
絵は「コッコさん」シリーズの片山健さん。
実はこの作品が、片山さんの絵本デビュー作なのですね。
しかし、この絵本を発表したっきり、片山さんは10年以上も絵本の仕事から離れています。
彼を再び絵本製作に向かわせたのは、子どもが誕生したことがきっかけのようです。
それを踏まえてこの作品と、以後の作品の絵を見比べてみると、実際に子どもと生活する中での影響がどこに現れているのか、なかなかに興味深いです。
さて、内容を見てみましょう。
ゆうちゃんがお菓子の缶とコップでミキサー車を作ります。
すると、その缶が楽しい歌を歌い出し、ぐんぐん大きくなって本物のミキサー車に変身。
「なんでも おなかに ぶちこんで」
「ごろごろ まわせば たちまちに」
「すてきな おかしが できあがる」
そこで、ゆうちゃんはミキサー車に乗り込み、おなかに入れる材料を求めて出発します。
森に入り、色々な動物たちから材料を分けてもらいます。
みつばちからハチミツを。
にわとりと牛からたまごと牛乳を。
さるからは「きんいろの くだもの」(正体不明)を。
そして、熊からは雪を。
それらを全部ミキサーにぶち込んで、ごろごろ回しながら公園まで来ると、遊んでいた子どもたちが駆け寄ってきます。
ゆうちゃんがミキサー車のボタンを押すと、中から出てきたのは……。
「うわっ、おいしい あいすくりーむだ」
というわけで、子どもたちの大行列ができます。
★ ★ ★
橙を効果的に使った色鉛筆画。
絵本の絵としての完成度は、この時点で十分に高いのですが、同じ色鉛筆画でも、後期作品の「おなかのすくさんぽ」などと比べると、ずいぶん印象が違います。
もちろん、自身が文を手掛けていることや、絵本としての方向性の違いもありますが、何と言っても子どもの描き方が違います。
この「ゆうちゃんのみきさーしゃ」では、まだ可愛らしい子どもを描いています。
それが、自らが親となり、「なま」の子どもを身近に観察する機会を得たことで、片山さんの大きな特徴である「野生味」溢れる子ども絵に進化したのでしょう。
やはり、絵本を描く人間にとって、身近な子どもは大きな影響を与える存在なのでしょう。
すぐれた絵本作家に女性が多いのは、ひとつには男性よりも子どもというものをよく知っているからだと思います。
推奨年齢:3歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
アイスクリームというより綿菓子に見える度:☆☆☆☆
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