2017.07.27 Thursday
【絵本の紹介】「すいかのたね」【163冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今日7月27日は「スイカの日」だそうです。
というわけで、今回は「すいかのたね」を紹介しましょう。
作・絵:さとう わきこ
出版社:福音館書店
発行日:1987年9月15日
高齢化社会の星、「ばばばあちゃん」シリーズ。
このブログでは2度目の登場です。
今作でもそのパワフルさとスケールの大きさは健在です。
ばばばあちゃんは庭にすいかのたねを撒きます。
「まいた」と表記されてますが、絵を見るとたった一粒のたねを「うめた」だけ。
こんなもんで芽が出るのか、甚だ疑問です。
さて、それを木の上で見ていた子猫が、
「ばばばあちゃん、だいじそうに なにか じめんに かくしたな」
と、ばばばあちゃんがいなくなると、地面を掘り返します。
出てきたすいかのたねを見て、
「なあんだ、つまらない くろい たねだ」
と、がっかりしてまた埋め戻します。
それを見ていた子犬が……。
と、次々に動物たちが地面を掘っては、
「なあんだ」
の繰り返し。
やがてすいかのたねに異変が生じ始め、最後にぐるっと回ってばばばあちゃんが掘り返した時、すいかのたねはブチぎれます。
「いいかげんにしろ。つまらんとか なんとか やたら いいくさって!」
まあ、こうも何度も掘り起こされたんでは、おちおち芽も出せないのはもっとも。
しかし、そんな理屈が通じるばあさんではありません。
「めを だすの ださないのって、おまえさんが いつまでも ぐずぐずしてるから こういうことになるのさ!」
理不尽100%の逆ギレ。
もう頭にきたすいかのたねは、怒った勢いのままに芽を出し、ぐんぐんつるを伸ばします。
森にも、家の中にまで。
そして、見事なすいかをたくさん実らせます。
食べようとしてすいかを切ると、今度は中から声が。
「これでも つまらんやつかい。え!」
★ ★ ★
誰かがすいかのたねを埋めているのを見て、次々に掘り起こし、一周して「最初のひと」に戻るという、落語的おはなし。
キレのいい文で、読んでいても楽しいです。
それにしても、すいかのたねの意外なまでの気の強さ。
「かにむかし」の柿の木みたいに、ビビッて芽を出すのとは違って、怒りに任せて生長するというパターンは珍しいですね。
そしてそれに対するばばばあちゃんも、一歩も引かない喧嘩腰。
調停者もなし。
ですから、前半の心地よい展開に比して、後半からオチにかけては、何だかカオスなことになってます。
野菜や果物の栽培には、愛情を込めて話しかけてあげると甘くおいしくなると言われますが、罵り合いの中で大きくなったこのすいか、果たして味の方は大丈夫なんでしょうかね。
おしまいのページを見る限り、おいしく食べているみたいですが。
推奨年齢:3歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
理不尽度:☆☆☆☆☆
■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「すいかのたね」
■ばばばあちゃんの他作品→「たいへんなひるね」
■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧」
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