【絵本の紹介】「おうさまババール」【162冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は久しぶりにあの人気シリーズの続きを紹介しましょう。

「ぞうのババール」シリーズの第三章、「おうさまババール」です。

作・絵:ジャン・ド・ブリュノフ

訳:矢川澄子

出版社:評論社

発行日:1974年10月20日

 

ババールを巡る壮大な大河ロマン絵本。

全2作の紹介記事も併せてお読みください。

 

≫絵本の紹介「ぞうのババール」

≫絵本の紹介「ババールのしんこんりょこう」

 

これまでのあらすじは……。

ジャングルで幸せに暮らしていたぞうのババールは、ある日猟師に母親を殺され、パリの街へと逃亡します。

そこでおばあさんという最高の理解者兼スポンサーを得て、ババールは文化的生活を送ります。

やがてジャングルに戻ったババールはぞうの国の王さまとなり、妃のセレストとともに新婚旅行に出発します(「ぞうのババール」)。

 

新婚旅行ではトラブル続きで、サーカスに売り飛ばされてしまうババールたち。

何とか逃げ出し、懐かしいおばあさんの助けを借りて、ぞうの国へ帰還します。

しかし、故郷はさいの国との戦争で荒廃していました。

知恵によって戦争に勝利したババールは、ぞうの国の再建を誓います(「ババールのしんこんりょこう」)。

 

さて、目まぐるしかった前作に比べて、今作「おうさまババール」では、平穏でゆったりとした展開で物語は進みます。

ババールはおばあさんの協力も得て、みんなで力を合わせて新しい都「セレストビル」を建設。

学校、図書館、役所がある「しごとのやかた」と、音楽、芝居、サーカス、映画、ダンスを楽しめる「たのしみのやかた」。

 

ぞうたちはそれぞれに仕事を持ち、それぞれが誰かの役に立つことで、暮らしを立てます。

貧困も差別もない、これは作者にとっての理想社会の具現化だと思われます。

 

繁栄が続き、セレストビルは1周年を迎えます。

記念の式典も盛大に行われ、まさに幸福の絶頂というその時、突然悪夢のような展開が訪れます。

ババールにとって大切な存在であるおばあさんが、毒蛇に嚙まれてしまいます。

おばあさんの腕は腫れ上がり、危篤状態に陥ります。

 

さらに長老格のコルネリウスの家が火事に遭い、コルネリウスは病院へ搬送されます。

 

事件の連続で疲労したババールの夢枕に、「ふしあわせ」という名の老婆が、醜い仲間をぞろぞろ連れてやってきます。

悲鳴を上げるババールですが、耳を澄ますと、ぞうの天使たちが幸せをもたらすために参上し、「ふしあわせ」たちを追い払ってくれます。

 

翌朝、ババールはすっきりした気分で目を覚まします。

病院へ行くと、おばあさんとコルネリウスは元気を取り戻していたのでした。

 

★      ★      ★

 

シリーズ通して読むと、ここで改めてこの作品の強いメッセージ性に気づかされます。

一見するとどこかふざけた、ご都合主義全開のユーモア絵本のような印象を受ける「ババール」ですが、実はその中に込められたメッセージは真摯で、誠実で、切実でさえあります。

 

式典帰りの突如の不幸は、それまでのゆったりとした時間の流れを、ぞっとするような早さで断ち切ります。

それは小さなコマ割りによって表現されています。

 

ババールの夢に現れた「ふしあわせ」は、「いかり」「おそれ」「やけくそ」「まぬけ」「びょうき」「がっかり」「なまけもの」「おくびょう」「ばか」「ぐうたら」という、ありとあらゆる負の感情を引き連れてきます。

 

一方、「しあわせ」をもたらす天使たちの名は、「やさしさ」「かしこさ」「のぞみ」「しごと」「けんこう」「あい」「しんぼう」「ゆうき」「がくもん」「よろこび」「まけるものか」。

 

毎回書いていることですが、このシリーズは不治の病に侵されたブリュノフさんが、迫りくる死を前に、残された子どもたちに向けて懸命に描き続けた作品です。

彼はあくまでも「子どもたちを楽しませること」を前提に物語を語ります。

しかし、その中には確かに一本芯の通った、明確で力強いテーマが存在しています。

 

この世に存在する、避けがたい不幸や悲しみに打ち勝つために、何が必要なのか。

 

もう一度、「しあわせ」の天使たちの名を読み返してください。

ブリュノフさんが子どもたちに伝えたかったこと。

残したかったこと。

 

夭逝の天才作家は、その独特のユーモアある語り口と素晴らしい絵に乗せて、人生を幸せに生きるための法則を伝えています。

幼い読者がこの物語から受け取るものは、その後のどんな教訓よりも、魂の深い部分に根付き、強靭な礎になるでしょう。

 

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