2017.07.25 Tuesday
【絵本の紹介】「めっきらもっきらどおんどん」【161冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回も夏にぴったりの絵本を紹介します。
「めっきらもっきらどおんどん」です。
作:長谷川摂子
絵:ふりやなな
出版社:福音館書店
発行日:1990年3月15日(こどものとも傑作集)
作者の長谷川さんは元保育士で、子どもたちとの触れ合いの中で絵本の力に気づき、作家の道を歩み始めました。
たくさんの読み聞かせ経験を活かした、子どもたちを引き込むリズム感のある文章が持ち味です。
降矢さんは「おれたちともだち」シリーズなどで人気の絵師さん。
さて、「めっきらもっきらどおんどん」。
タイトルだけでは内容はさっぱりわかりませんよね。
表紙は主人公らしき男の子と、怪しいシルエット。
怪談チックな内容を思わせますが、至って楽しいお話です。
舞台はどこかの田舎。
セミの鳴き声が聞こえてきそうな夏休みっぽい情景。
みんな家族で旅行にでも行ってしまったのか、遊び仲間が誰も見つからず、かんた少年は森の神社にまで来てしまいます。
そこでも誰もいないので、頭にきたかんたは、めちゃくちゃな歌を大声で歌います。
「ちんぷく まんぷく あっぺらこの きんぴらこ じょんがら ぴこたこ めっきらもっきら どおんどん」
すると風が起こり、ご神木の根元から声が。
根元の穴をのぞき込むと、いきなり吸い込まれて……
着いたところは夜の山。
かんたの前におかしな妖怪3人組が現れて、「あそぼうぜ」と誘います。
見た目はちょっと怖いけど、3人の中身はまるっきり無邪気な子ども。
かんたは、空を飛んだり、宝物を交換したり、思い切り遊びます。
横開きや縦開きの画面をいっぱいに使い、縦横無尽に展開する躍動感あふれるイラストと、テンポのいいテキストが相乗効果を生んでいます。
遊び疲れた妖怪たちは眠ってしまいます。
ひとりで月を見上げるうち、かんたは心細くなって、3人組が止めるのも聞かず、「おかあさーん」と叫んでしまいます。
するとその言葉を鍵とするように、かんたは現実世界に舞い戻ります。
★ ★ ★
絵本好きな方ならすぐに思い当るでしょうけど、これはかの有名なモーリス・センダックさんの「かいじゅうたちのいるところ」と酷似した構成の物語です。
幻想の世界に引き込まれた男の子が「かいじゅう」や「おばけ」に出会い、思いっきり遊ぶ。
感情を吐きつくした後は寂しくなり、母親を求める気持ちに促されて現実へ戻る。
ちょっと怖い3人の妖怪に対して、かんたが主導権を握っている点や、現実へ戻るきっかけが母親への慕情である点など、たぶん長谷川さんは「かいじゅうたち」をはっきり意識してこの作品を作ったのだと思います。
ただ違う点は、「かいじゅうたち」が、主人公の感情や衝動が生み出したものであり、完全に彼の内面世界であるのに対して、この「めっきらもっきら」に登場するおばけたちは、必ずしもかんた少年の空想の産物であるとは言い切れないところです。
田舎の森なんて、今でも「何か」出そうですもんね。
この世界には、「不思議なもの」が隠れ潜んでいる、という、幼い頃に確信めいて覚えた感情。
大人になってから読むと、そんなノスタルジーを引き起こしてくれる作品です。
推奨年齢:3歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
ジブリっぽさ度:☆☆☆☆
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