【絵本の紹介】「ガッタンゴットン」【159冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

とうとうスズキコージさんの絵本を紹介する時がきました。

正直言って、どう取り扱っていいかわかりません。

そういう作家さんなのです。

 

とりあえず、スズキワールド全開な「ガッタンゴットン」を紹介します。

作・絵:スズキコージ

出版社:平凡社

発行日:2006年6月

 

トナカイ(のようなもの)が、りんごを積んだトロッコに乗り、旅をする……というストーリー、らしいです。

らしい、と言うのは、文章では何も説明されていないからです。

 

文はありますが、ほぼ「ゴゴゴゴ」とか「ガッタンガッタン」とかいう擬音中心で、とにかく絵を見て、その内容を追うのがこの作品のすべてです。

そういう意味では、正しく「絵本」と呼べます。

 

同じナンセンス作家の長新太さんの「ごろごろにゃーん」とよく似た構造の作品です。

 

≫絵本の紹介「ごろごろにゃーん」

 

しかし、問題は絵のアクの強さ、インパクトの強烈さ。

登場人物の表情はどこか狂気を帯びており、黒魔術的な何かを感じてしまいます。

一種のアブナさを予感して、手に取るのを敬遠する方もいるかもしれません。

 

しかし、内容は別に怖くも何ともないし、何よりも見るものを惹きつける力に満ちていることは確かなのです。

 

この「ガッタンゴットン」は、最初の見返しから最後の見返しまで、全部見開きのパノラマです。

細部に色々な(正体不明の)イラストが描かれており、あれこれ想像しながら何度でも楽しめます。

魔女(?)の館を通り抜けると、車両と積み荷が増え、トナカイが帽子をかぶって出てきます。

途中の停車駅には「HABELAST RAMPA」という文字。

文も「シュー」「ハベラスト ランパ ハベラスト ランパ ランパ」。

 

まったく意味不明ですが、耳に残って仕方ない。

ここでも乗客が増えたり、積み荷が変化します。

最後は白ヤギ(?)の群れとともに港駅「ハベラスト ソンテ」に到着。

ここでりんごが捌かれます。

 

トロッコは蒸気船に乗り、海の上を「ガッタン ゴットン」。

 

★      ★      ★

 

いったい、こんな絵本を描くスズキさんとはどんな人なのか、興味を引かれずにはいられません。

たまにあとがき的なものを書かれていますが、やっぱり変です。

 

彼の作品にはいつも独特な異国情緒が漂っていますが、それがどこの国かと問われれば、どこでもない、スズキワールドである、としか答えようがないかもしれません。

スズキさん自身も、「こどものとも」1987年8月号の折り込み付録のインタビューで、

ぼくの絵は、日本という枠組みが取れちゃった時代、例えばアイヌだとか、朝鮮とか、台湾とかマレーシアとかシベリアとかがごった煮になっている

と語っていますが、それを意識的に描いているわけではなく、自分の脳内にある景色を自然に取り出していくとこういう絵になった、ということらしいのです。

 

ま、細かいことは抜きにして、スズキさんの脳内世界に飛び込んで、心行くまで楽しめればそれでいいと思います。

なんだかんだ言って、私も個人的に大好きですし。

 

推奨年齢:3歳〜

読み聞かせ難易度:☆

読者置いてきぼり感が逆に楽しい度:☆☆☆☆☆

 

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