2017.07.14 Friday
【絵本の紹介】「ねぎぼうずのあさたろう その1」【156冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
私は子どものころ、よく祖父母の家で過ごしました。
祖父とはほとんど会話もなかったけれど、毎日決まってテレビの時代劇を見ている人でした。
でも、私は全然興味がなく、話の内容もちんぷんかんぷんで、登場人物の会話も少しも頭に入ってこないし、
「毎回なんかゴニョゴニョやってるけど、結局最後にチャンチャンバラバラやって一件落着」
というお約束の、どこがおもしろいんだろう、と思っていました。
ところが今、子どもを持つ歳になってから、なんだか無性に時代劇とか、古臭い邦画とかを観たくなるんですね。
あの「お約束」の世界の魅力に気づいたわけです。
時代劇にしろ、任侠ものにしろ、「型」があるから心地いいんですね。
今回は思いっきり「型」通りの時代劇絵本というやつを紹介しましょう。
「ねぎぼうずのあさたろう その1」です。
作・絵:飯野和好
出版社:福音館書店
発行日:1999年11月20日
一度見たら忘れられないこの画風。
作者の飯野さんは秩父の農村で育ち、幼いころの「チャンバラごっこ」を原点に、この作品を描いたそうです。
タイトル通り、主人公はネギ。
登場人物は野菜。
でも、内容はファンタジーではなく、「義理と人情」の時代劇です。
扉ページを開くと、のっけから「二代広沢虎造風浪曲節で」と注釈を入れた上で、
「はるがすみ〜 むさしのくにの つちのかおり」
と歌い出します。
飯野さん、ノリノリですな。
時代劇とか浪曲とかに疎いであろうお母さん方に妥協する気ゼロで、嬉しくなります。
「あさつきむら」の、ねぎぼうずの「あさたろう」は、村の顔役である「やつがしらのごんべえ」たちの乱暴狼藉を見かねて飛び出し、必殺の「ねぎじる」攻撃でごんべえたちを懲らしめます。
ごんべえの報復を考えたあさたろうは、村を離れ、旅に出ます。
廻し合羽に三度笠。
江戸時代の東海道沿いの風俗が描かれ、楽しさ満載です。
そこの茶店で、謎の浪人者が登場。
なんかかっこいいけど、正体は「きゅうりのきゅうべえ」。
ごんべえの頼みにより、あさたろうの命を狙いに来た刺客だったのです。
山道での対決。
おっかさんの用意してくれたわさびと唐辛子で、あさたろうは窮地を脱し、また旅を続けるのでした。
★ ★ ★
浪曲は、落語や講談と並んで、大衆に大変な人気のあった芸道です。
この絵本はそんな「浪曲」をイメージした語り口調で作られており、読み聞かせが難しそうに思う人も多いかもしれません。
でも、別に難しく考えなくても、でたらめの節でもいいから「それっぽく」語ったり唸ったりすればいいと思います。
やってみると実に楽しいですよ。
子どもも必ず喜びます。
言葉の難しさなんか、気にする必要はありません。
まったく浪曲がイメージできない人は、一度ネット上の動画などで「二代広沢虎造」を検索してみてください。
「清水の次郎長伝」とか、ついつい聴き入ってしまいますよ。
あれを自分でやれると思うとわくわくしてしまいます。
この「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズは現在10作目まで刊行されており、テレビアニメ化もされるなど、すっかり人気者です。
この絵本をきっかけに、浪曲の世界に興味を持つ人が増えることを願います。
能狂言とか文楽なんかも、どんどん絵本化してみてほしいですね。
難しそうだけど。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆
アングルの効果的度:☆☆☆☆☆
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