2017.07.13 Thursday
【絵本の紹介】「ごろごろにゃーん」【155冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回は長新太さんの代表作のひとつである「ごろごろにゃーん」を取り上げます。
作・絵:長新太
出版社:福音館書店
発行日:1984年2月15日(こどものとも傑作集)
長新太さんの作品を解説するのは簡単ではありません。
過去記事も含めて読んでいただければと思います。
さて、この「ごろごろにゃーん」は、ナンセンスの神様・長さんの本領発揮といった絵本です。
内容は、どこかの海の上で、魚の形をした飛行機に、猫たちがボートで乗り込み、「ごろごろにゃーん」と色んな場所を飛び回り、また帰ってくる、というもの。
「ごろごろ」は、飛行機と猫ののどの音を掛けたもの、「にゃーん」は猫の鳴き声です。
この作品を受け入れられるかどうかは、つまるところ、「絵本を読めるかどうか」にかかっています。
「絵本を読む」というのは、単にテキストを読むことではなく、「絵そのものを読む」ことです。
それができないと、この絵本は全然おもしろくない。
というか、テキストはほぼ「ごろごろ にゃーん ごろごろ にゃーん と、ひこうきは とんでいきます」ばっかりなので、内容については絵を見ないとさっぱりわかりません。
絵本なんだから、絵を見なければなりません。
長さんはそこにこだわっているように思います。
絵を見れば、猫たちの「冒険」を楽しめるようになってます。
魚を釣って食べたり、大きなクジラに食べられそうになったり、犬たちに吠えたてられたり、都会のビルを越え、山や谷を越え。
そして、長さん絵本に共通する「読み手の思い込みを裏切り続ける展開」。
ページをめくるたびに、意外なものが出てきます。
UFO、蛇、ジャンボジェット……。
で、これが散々議論を呼んだ「手」の出てくるカット。
「なんで手が出てくるんだ!」
と怒り出す大人もいるでしょう。
でも、そもそも「魚の形をした飛行機に猫が乗ってる」というありえない前提を受け入れておきながら、「予想外」のものが出てくると「おかしい」と感じるのはどうしてですかね?
このカットは、エッシャーの「描く手」(二つの手が、お互いの手を描いているという一種のだまし絵)を彷彿とさせるものがあり、読者の「認識のありかた」を問いかけるような作者の意図が感じられます。
何事にも意味を求め、「子どものためになるかどうか」という観点でしか絵本を見れない大人たちは、こういう絵本を見ると、何だか居心地の悪さを感じ、時には「馬鹿にするな」と怒り出します。
そういう大人の視野狭窄を無視して、長さんは描きたいものを描き続けたのです。
なぜなら、論理的意味だけでは、子どもが本当に求めるものには辿り着けないことを、長さんは誰よりも知悉していたからです。
推奨年齢:2歳〜
読み聞かせ難易度:☆
前衛的度:☆☆☆☆☆
■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ごろごろにゃーん」
■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧」
■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。
■絵本の買取依頼もお待ちしております。
〒578−0981
大阪府東大阪市島之内2−12−43
E-Mail:book@ehonizm.com