【絵本の紹介】「ごろごろにゃーん」【155冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回は長新太さんの代表作のひとつである「ごろごろにゃーん」を取り上げます。

作・絵:長新太

出版社:福音館書店

発行日:1984年2月15日(こどものとも傑作集)

 

長新太さんの作品を解説するのは簡単ではありません。

過去記事も含めて読んでいただければと思います。

 

≫絵本の紹介「キャベツくん」

≫絵本の紹介「チョコレートパン」

≫絵本の紹介「ぼくのくれよん」

 

さて、この「ごろごろにゃーん」は、ナンセンスの神様・長さんの本領発揮といった絵本です。

内容は、どこかの海の上で、魚の形をした飛行機に、猫たちがボートで乗り込み、「ごろごろにゃーん」と色んな場所を飛び回り、また帰ってくる、というもの。

 

ごろごろ」は、飛行機と猫ののどの音を掛けたもの、「にゃーん」は猫の鳴き声です。

この作品を受け入れられるかどうかは、つまるところ、「絵本を読めるかどうか」にかかっています。

「絵本を読む」というのは、単にテキストを読むことではなく、「絵そのものを読む」ことです。

 

それができないと、この絵本は全然おもしろくない。

というか、テキストはほぼ「ごろごろ にゃーん ごろごろ にゃーん と、ひこうきは とんでいきます」ばっかりなので、内容については絵を見ないとさっぱりわかりません。

絵本なんだから、絵を見なければなりません。

長さんはそこにこだわっているように思います。

 

絵を見れば、猫たちの「冒険」を楽しめるようになってます。

魚を釣って食べたり、大きなクジラに食べられそうになったり、犬たちに吠えたてられたり、都会のビルを越え、山や谷を越え。

 

そして、長さん絵本に共通する「読み手の思い込みを裏切り続ける展開」。

ページをめくるたびに、意外なものが出てきます。

UFO、蛇、ジャンボジェット……。

で、これが散々議論を呼んだ「手」の出てくるカット。

なんで手が出てくるんだ!

と怒り出す大人もいるでしょう。

 

でも、そもそも「魚の形をした飛行機に猫が乗ってる」というありえない前提を受け入れておきながら、「予想外」のものが出てくると「おかしい」と感じるのはどうしてですかね?

 

このカットは、エッシャーの「描く手」(二つの手が、お互いの手を描いているという一種のだまし絵)を彷彿とさせるものがあり、読者の「認識のありかた」を問いかけるような作者の意図が感じられます。

 

何事にも意味を求め、「子どものためになるかどうか」という観点でしか絵本を見れない大人たちは、こういう絵本を見ると、何だか居心地の悪さを感じ、時には「馬鹿にするな」と怒り出します。

そういう大人の視野狭窄を無視して、長さんは描きたいものを描き続けたのです。

 

なぜなら、論理的意味だけでは、子どもが本当に求めるものには辿り着けないことを、長さんは誰よりも知悉していたからです。

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆

前衛的度:☆☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「ごろごろにゃーん

■これまでに紹介した絵本のまとめはこちら→「100冊分の絵本の紹介記事一覧

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