2017.07.11 Tuesday
【絵本の紹介】「りんごかもしれない」【153冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回はここ数年、最も勢いと人気のある絵本作家・ヨシタケシンスケさんの、衝撃のデビュー作を紹介します。
「りんごかもしれない」です。
作・絵:ヨシタケシンスケ
出版社:ブロンズ新社
発行日:2013年4月25日
もう、このタイトルと表紙イラストだけでも、ただごとじゃないセンスを感じます。
もともとヨシタケさんはイラストレーター出身で、児童書の挿絵の他、広告美術などの分野で活躍されていました。
独特の、なんともユルい線のとぼけた絵が特徴的。
しかし、何気ない日常から想像力でもって非日常の世界を紡ぎ出す、その目の付け所は実にシャープです。
テーブルの上にりんごがある。
しかしそれを見た少年は、
「もしかしたら これは りんごじゃないのかもしれない」
と、問題を提起。
そこから始まり、たった一個のりんごから、エンドレスな想像(妄想?)を繰り広げます。
「もしかしたら おおきな サクランボの いちぶかもしれない」
「それか なかみは ぶどうゼリーなのかもしれない」
「あるいは むいても むいても かわかもしれない」
……等々、「かもしれない」は果てしない知的広がりを見せます。
想像はあらぬ方向へ突き進み、読んでいる方はツッコミをいれたくなるやら、おかしいやら。
でも、笑いながらも「……かもしれない」と、心の奥で呟く自分にも気づかされます。
読み終われば、子どもも自分も、いっしょになって「かもしれない遊び」をしてしまうこと必至です。
★ ★ ★
こういう種類の笑いは、大人も子どもも関係ないのでしょう。
うちの息子も大ハマリでした。
どこか「ふまじめ」感漂う絵と内容ですが、これは立派な「哲学」です。
「ぼくからみえない はんたいがわは ミカンかもしれない」
なんてのは、完全に実在論についての思考です。
「かもしれない」はすべての哲学的思考の始まりであり、知性とは「かもしれない」と思える能力なのかもしれません(あ)。
この「りんごかもしれない」の爆発的ヒットに続き、出す絵本がことごとく売れているヨシタケさん。
常識に縛られず、新たな絵本の可能性を切り拓く姿勢が、人気の秘密でしょう。
この先も目が離せない作家さん「かもしれない」です。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆☆
「かもしれない」中毒度:☆☆☆☆☆
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