2017.07.03 Monday
【絵本の紹介】「うさこちゃんとうみ」【149冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
7月に入り、俄然暑くなってきました。
もう今年も上半期が終わっちゃったんですねえ。
絵本界の上半期の大きな出来事と言えば、2月に世界的絵本作家、ディック・ブルーナさんが鬼籍に入られたこと。
キャラクターとしての「ミッフィー」しか知らなかった方も、この機に絵本を手に取って欲しいと思います。
今回は「うさこちゃん」シリーズの初期作品にして、これからの季節にもぴったりの一冊を紹介しましょう。
「うさこちゃんとうみ」です。
作・絵:ディック・ブルーナ
訳:石井桃子
出版社:福音館書店
発行日:1964年6月1日
「うさこちゃん」「ミッフィー」「ナインチェ・プラウス」など、世界中の国ごとの呼び名を持つ人気者。
詳細は過去記事をご覧ください。
この福音館書店版の「うさこちゃん」というネーミングは、訳者の石井さんによるものです。
そして後述しますが、作品内容に関しても、この石井さんの訳文が大きな影響を与えています。
その内容ですが、筋立てはいたって単純です。
登場人物はうさこちゃんと、うさこちゃんのお父さんの「ふわふわさん」だけ。
父娘で海水浴に行きます。
まずはふわふわさんが、
「きょうは さきゅうや かいのある おおきな うみに いくんだよ。いきたいひと だあれ?」
うさこちゃんが、
「あたし あたしが いくわ!」
で、ふわふわさんが引くトロッコみたいなリヤカーに乗って、海へ。
ブルーナさんの絵本は「ブルーナカラー」と呼ばれる、6色の指定色のみで彩色されています。
ゆえに、空と海は同色。
太陽の色を黄色にすると、昼なのか夜なのかわかりません。
海に着くと、うさこちゃんはまさかのトップレス水着に着替えます。
「おまえひとりで はけたのかい?」
と、娘の自尊心をくすぐるようにわざとらしく驚いて見せるふわふわさん。
うさこちゃんは砂山を作ったり、学会に発表できそうな色の貝殻を集めたり、海に入って遊んだり。
帰り路でくたびれて眠ってしまいます。
★ ★ ★
「ちいさなうさこちゃん」では生まれたての赤ちゃんだったうさこちゃんですが、シリーズ2作目にあたる今作では、一気に成長し、大いに喋ります。
ふわふわさんとの会話を見ていると、なかなかおしゃまな性格のようです。
が、実は冒頭の父娘の会話文の大部分は、石井さんの創作のようです。
英語版はもっとシンプルで、「お父さんはうさこちゃんを海に連れて行きました」てなもんです。
でも、石井さんのこの訳は名文だと思います。
この絵本の核となる「父と娘」の関係性が、より生き生きと思い描けます。
ふわふわさんの、うさこちゃんをリードするセリフ回しのひとつひとつが、実にいい感じなんです。
「いきたいひと だあれ?」
「おまえひとりで はけたのかい?」
「とうさんが のっても つぶれないような おおきな すなやまが できるかな?」
「もっと あそんでいたいけど もう かえらなくちゃ ならないな」
こんな風に、子どもにさりげなく主体性を持たせるように、意図的に言葉を選んでいます。
これはなかなか人間力のいる技で、私が真似しようとしても、ここまで嫌味なく、スマートに威厳を保てるとは思えません。
そう言えば、我が家の息子はまだ海に行ったことがありません。
どころか、プール遊びすらしてません。
水に慣れるのは早いほどいいのでしょうけど、混雑とか、紫外線とか、道中の苦労とか、考えるだけでもう……。
自家用プールでもあればねえ。
推奨年齢:1歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
うさこちゃんのセクシー度:☆☆☆☆☆
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