【絵本の紹介】「チムとゆうかんなせんちょうさん」【148冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

私が子ども時代に夢中になった冒険小説と言えば、スティーブンソンの「宝島」です。

海と冒険は切っても切り離せないもの。

 

果てしなく広い海。

潮のにおい。

荒っぽい船乗りたちの掛け声。

危険な魅力に満ち溢れた世界。

 

そこへ自分が飛び込んでいくことを想像すると、震えるほどの興奮を覚えました。

いつの時代も、男の子が冒険に憧れる気持ちは変わらないのでしょう。

 

今回は海洋冒険絵本の最高峰シリーズより、「チムとゆうかんなせんちょうさん」を紹介します。

作・絵:エドワード・アーディゾーニ

訳:瀬田貞二

出版社:福音館書店

発行日:1963年6月1日

 

作者のアーディゾーニさんは、イギリスを代表する挿絵画家。

生涯に180冊以上の作品を残しており、この「チムとゆうかんなせんちょうさん」は、35歳の時に息子のために作った物語で、以後シリーズ化し、77歳で全11冊を完結させました。

 

今なお色褪せぬアーディゾーニさんの挿絵の魅力については、一言では語りつくせません。

特徴的なのは、基本的に「引いた」アングルで描くこと。

顔のアップなどはほぼありません。

それでいて、ペン一本で描かれたモノクロカット一枚一枚には、読む者の想像力を刺激し、物語に最大限の効果を添える力が備わっています。

生粋の挿絵職人と呼ぶべきでしょう。

 

ちなみに、こぐま社の創業者・佐藤英和さんは熱狂的なアーディゾーニファンであり、コレクターであることで有名です。

 

さて、作品の内容紹介に入りましょう。

チムは船乗りに憧れる男の子。

港町に住み、浜で遊んだり、仲良しの船長さんから航海の思い出話を聞いたり。

 

そのうちに憧れはどんどん膨らみ、ある日ついに、こっそり汽船に乗り込んでしまいます。

船員に見つかったチムは、船長の前へ連れて行かれます。

 

船長は怒り、チムにただ乗り分の仕事をさせます。

辛い仕事でしたが、チムはよく働き、次第に船長や乗組員たちから認められていきます。

 

コックと仲良くなったり、船の操縦を教えてもらったり。

 

しかしある嵐の夜、船は岩にぶつかって横倒しになり、沈み始めます。

船員たちはボートで脱出しますが、チムは逃げ遅れて、船に取り残されてしまいます。

 

ブリッジに出ると、船長がたった一人で残っていました。

チムを見つけると、船長は彼の手を握り、言います。

 

やあ、ぼうず、こっちへ こい。なくんじゃない。いさましくしろよ。わしたちは、うみのもくずと きえるんじゃ。なみだなんかは やくに たたんぞ

 

その言葉に、チムは勇気を奮い起こし、泣くのをやめ、最後の時を待ちます。

その時、救命ボートが近づいてきて、二人は危ないところで助かります。

 

陸地に戻ったチムは、すっかり有名人扱い。

元気になると家に送り届けてもらい、船長さんはチムの両親に、チムの勇ましかったことを褒め、次の航海にぜひチムを連れて行きたい旨を告げます。

両親の許しを得て、チムはとても喜ぶのでした。

 

★      ★      ★

 

まさに男の子のための冒険物語。

海への憧れを叶え、逞しい船乗りたちに混じって認められ、大冒険を経て無事に帰還し、大人たちに褒められる。

文句なしに痛快で幸せなストーリーです。

 

少し長いですが、5歳くらいからでもおすすめです。

自分で読みふけるもよし、寝る前に読み聞かせてあげれば、ワクワクするような勇ましい気持ちとともに眠りにつけるでしょう。

 

また機会を見つけて、チムの冒険の続きを紹介していきたいと思います。

 

推奨年齢:5歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆☆

ボートのおじさんの責任感度:☆

 

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