【絵本の紹介】「11ぴきのねこ」【144冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はいよいよ、というか、

え、まだこのブログでやってなかったっけ

と意外に思うほど有名なあのシリーズを初紹介します。

 

ご存知、「11ぴきのねこ」です。

作・絵:馬場のぼる

出版社:こぐま社

発行日:1967年4月1日

 

今年で発行から50周年、シリーズ累計部数400万部以上という大人気ロングセラー絵本。

 

作者の馬場のぼるさんは漫画家出身で、手塚治虫・福井英一とともに「児童漫画界の三羽烏」と呼ばれた方。

同様に漫画家から絵本作家へ転身した長新太さんややなせたかしさんらと共に、「漫画家の絵本の会」という会を結成しています(ここに挙げた方々、よく考えたらみんなすでに亡くなられましたね……)。

 

さて、「11ぴきのねこ」を読んでみましょう。

表紙がとても印象的です。

赤い夕焼け空に、魚やタコの形をした雲が浮かび、11ぴきのねこ(とらねこたいしょうは裏表紙にいます)が、実に幸せそうな顔で空を見上げています。

11ぴきはいつもお腹を空かせています。

 

ある時、じいさんねこに「かいぶつ みたいな おおきな さかな」の存在を教えられた11ぴきは、その巨大魚が棲む湖へと向かいます。

11ぴきは筏を造り、湖に漕ぎ出します。

何日も魚を探し続け、ついに遭遇。

一斉に飛びかかるも、あえなく返り討ちに。

 

それでも諦めずにチャンスを窺ううち、島の上で眠っている巨大魚を発見。

11ぴきは、以前に巨大魚が歌っていた「ねんねこさっしゃれ」の子守唄を歌いながら近づき、不意を突いてついに巨大魚を捕獲します。

 

勝利に酔う11ぴきは、帰ってこの魚をみんなに見せるまでは、食べるのを我慢することを約束し合います。

たいりょうぶし」や「ねんねこさっしゃれ」を歌いながら、帰路につく11ぴき。

しかし、内心では巨大魚が食べたくて仕方ありません。

 

そして、夜が来て……。

ああ! のらねこたち! たべちゃった!

11ぴき みんな みんな たぬきのおなか

 

★      ★      ★

 

子どもたちに展開を予想させ、「まっくらやみ」のシーンを挟むことで盛り上げ、そして期待を裏切らないオチと、「たぬきのおなか」の可笑しさ。

特筆すべきは、これらをすべて余すことなく絵で伝えている点です。

まさに絵本ならではの表現で、絵本界に燦然と輝く見事なラストシーンと言えるでしょう。

 

11ぴきは家族でも親戚でもなく「仲間」で、縞模様のとらねこたいしょうを除いては、外見も言動も個体識別ができません。

これは「ぐりとぐら」の2ひきが見分けがつかないことと共通しますが、「11ぴきのねこ」には、シリーズ通して人間の「集団心理」も描かれています。

 

11ぴきは仲間を思いやり、力を合わせて努力もしますが、欲深いところやずるさもあり、約束やルールを破っても平気です。

それは大勢の仲間がいるからこそ生まれる「個人的責任感の希薄さ」です(そのために、続編作品ではひどい目に遭ったりします)。

 

こういう「天使ではない、生身の子ども」の化身としてのキャラクターを描くのは、当時としてはなかなか勇気のいることだったと思います。

何しろ、巨大魚は何にも悪くないのに寝込みを襲われて食べられてしまうのです。

 

馬場さんとともにこの絵本を作ったこぐま社の佐藤英和さんは、大人からの批判も覚悟していたようです。

 

けれども、馬場さんも佐藤さんも、たとえ大人がどう思おうとも、この絵本を子どもが喜んでくれると信じていたのです。

 

何故なら、子どもにとってこの絵本は、紛れもない「ハッピーエンド」だからです。

11ぴきは大人の「こうあって欲しい」願望が投影された子ども像ではなく、子どもたちが「これは自分だ」と思える「現実の子ども」です。

その11ぴきが、いつもお腹を空かせ、腹いっぱいになりたいと思っている。

そして最後に、その願いが叶うのです。

 

こんな単純な話はありません。

だからこそ、子どもはこのラストシーンに快哉を叫ぶのです。

 

しかし、大人は何故か、子どもの願望をストレートに満たすことに心理的抵抗を覚えます。

そして、条件を付けたり、待たせたり、別の形に変えたりして、「小出しに」望みを叶えてやります。

子どもの欲望は不完全燃焼のままくすぶり続け、いずれ欲求不満の歪な大人に成長します。

 

馬場さんは、常に「子どもはだませない」と言っておられたそうです。

それゆえに、子ども向けの本を作ることの難しさを熟知し、「11ぴきのねこ」シリーズは、毎回、非常な試行錯誤と苦労の末にやっとの思いで誕生した作品ばかりでした。

 

「子どもだまし」が真に愚かしいのは、「子どもしかだませないような手を使う」からではなく、そもそも「子どもをだませる」と思っているからです。

 

いつも「子ども」のありのままの姿を見つめてきた馬場さんが、日本の絵本界に与えた影響は、計り知れないほど大きなものだったと思います。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

ラストシーンの秀逸さ度:☆☆☆☆☆

 

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