絵本の紹介「おやすみなさいおつきさま」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

大人にとっても、子どもにとっても、眠りに入る前の時間というものは大切です。

睡眠の直前は、最も暗示にかかりやすいと言われています。

できる限り、眠る前にはストレスや悩みから精神を開放してやって、明日への希望とともに眠りにつくことが、心身の健康のためにも重要です。

 

せめて、子どもが眠る一時間前からはテレビやPCを消し、多過ぎる情報から守ってあげましょう。

眠る前の子どもに絵本を読み聞かせることは、単に寝かしつけるためだけでなく、そうした観点からも良いことと言えます。

 

眠る前の絵本と言えば必ず挙げられる一冊、「おやすみなさいおつきさま」を紹介します。

1947年に発表された、これまた古典中の古典ですが、現在に至るまでずっと支持され続ける、本物のロングセラーです。

オバマ大統領が「人生最初の一冊」とし、雅子妃が「思い出の宝物」とされていることでも有名ですね。

 

作者のマーガレット・ワイズ・ブラウンさんは、自分では絵を描かない絵本原作者ですが、本当に数多くのすぐれた本を書きました。スコット社という出版社のカリスマ的編集者でもあり、たくさんの画家や作家が彼女の周りに集まりました。

 

その中でも、ブラウンさんが最も強く惹かれた画家が、この絵本の挿絵担当のクレメント・ハードさんです。

この絵本の独創的な試みは、場面を「おおきなみどりのへや」に限定しているところでしょう。

そこで、今から眠りにつこうとする子うさぎが、目に映る色んなものに「おやすみ」を言います。

ページをめくるごとに、カラーとモノクロが入れ替わります。

英語の原文では、

GOODNIGHT CHAIR

GOODNIGHT BEAR

といった風に、韻を踏んだ文章になっており、訳者の瀬田貞二さんが、その心地よいリズムを壊さぬよう、心を配っているのがわかります。

また、場面は一つに限定されていますが、ページごとに視座が変わっており、ねずみや子猫やおばあさんといった部屋の住人たちも、流動的にその位置を変えています。

そしておしまいに近づくにつれ、だんだん部屋が暗くなっていく工夫も施されています。

 

幻想的な雰囲気を持つ絵本ですが、よく読んでみれば、ここには非現実的な存在は描かれていません。

おつきさまをとびこしてるうし」の絵も、「にんぎょうのいえ」も、ちゃんと部屋に存在しています。

にもかかわらず、空想的に思えるのは、これが見事なまでに子どもの目に同化している作品だからではないでしょうか。

 

子どもにとっての世界との距離感、空想と現実の淡い境界線、しかし同時に徹底的に現実的な「ありのまま」を見据える目。

子どものとき、確かに世界はこんな風に見えていたのではなかったか……。

そんなことをふと考えさせられる絵本でもあります。

 

 

「探し絵」の要素もある作品ですが、よく見ると、壁にかかっている絵は、同じブラウンさんとハードさんの合作「ぼくにげちゃうよ」(原題・The Runaway Bunny)の一場面です。

さらに、本棚にも……。

 

 

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