【絵本の紹介】「しまふくろうのみずうみ」【142冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

北海道の釧路市動物園で、天然記念物のシマフクロウの孵化に、7年ぶりに成功したとの発表がありました。

というわけで、今回紹介するのは「しまふくろうのみずうみ」です。

作・絵:手島圭三郎

出版社:福武書店

発行日:1982年3月1日

 

手島圭三郎さんのデビュー作にして、絵本にっぽん賞を受賞した名作です。

古いものは福武書店から、現在はリブリオ出版が復刻版を刊行しています。

 

まず、版画絵の圧倒的な力強さに目も心も奪われます。

手島さんは北の国の広大で荘厳な自然と、そこで暮らす生き物を描いた絵本を数多く発表しています。

手島さんは幼少期を、北海道の北端で過ごした方で、自らこの作品を「少年時代の体験が、郷愁とあこがれに昇華して作り出された」と語っています。

 

ほっかいどうの ふかいふかい やまおく」の、「だれも しらない みずうみ」を舞台に、シマフクロウの親子の暮らしを描きます。

版画絵に彩色する手法。

翼を広げたシマフクロウの迫力に息を呑みます。

お腹を空かせて待つひなのために、湖で狩りをする父親。

水の跳ねる音に耳を澄ませ、一瞬のきらめきのうちに、水面に上がってきた魚を捕らえます。

月明かりに照らされた湖面に、どんどん広がっていく波紋。

静と動の見事な対比。

 

★      ★      ★

 

小学校のころ、彫刻刀で木版画を制作したことを思い出します。

全員無口になるんですよね。

 

それは素晴らしい版画を鑑賞する時も同じで、ここに描かれた静謐な世界の前では、余計な言葉は自然に消えてしまいます。

 

フクロウが流木の上で羽を休めながら、じっと目を閉じている姿は、沈思黙考しているようで、「森の賢者」なんて異名にも納得です(ゴリラも「森の賢者」でしたっけ)。

アイヌの人々はこの鳥を「コタン・コル・カムイ」(村を守る神様)と呼びました。

フクロウの威圧的な鳴き声が、悪魔を追い払ってくれると信じられていたのですね。

 

私も実物を見たことはありませんが、昼間の動物園で見るのと、北海道の野生を見るのとでは、その迫力や神秘性はまったく違うでしょう。

厳しい自然を知る作者だからこそ、ここまでの表現が成しえたのだと思われます。

 

子どもを引き込み、神秘的な野生を感じさせるのにじゅうぶんな力のある作品です。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

北海道の雄大な自然の表現度:☆☆☆☆☆

 

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