2017.06.12 Monday
【絵本の紹介】「ラチとらいおん」【137冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回はハンガリーのロングセラー絵本「ラチとらいおん」を紹介します。
文・絵:マレーク・ベロニカ
訳:徳永康元
出版社:福音館書店
発行日:1965年7月14日
「せかいじゅうで いちばん よわむし」な男の子・ラチと、彼を強くするためにやってきた「ちいさな あかい らいおん」のお話。
「ドラえもん」をイメージさせるスタイルの物語です。
何と言っても、この「らいおん」のキュートなこと。
(・ω・)←こんな顔が、2頭身に収まっていて、今でもじゅうぶんゆるキャラとして通用する絶妙なキャラクターデザイン。
なおかつ、文と絵がテキトーなようでいて、なぜか心に響きます。
ラチは犬を見ると逃げ出し、暗い部屋には怖くて入れません。
友達からも馬鹿にされ、遊んでもらえません。
そんなラチが好きなのはライオンの絵。
「ぼくに、こんな らいおんがいたら、なんにも こわくないんだけどなあ」
ところがある朝、目を覚ますとベッドのそばに、「ちいさな あかい らいおん」がいます。
花瓶の花を一本口にくわえて、にくいポーズを取る「らいおん」。
その滑稽さにラチは大笑いし、「らいおん」は怒ります。
椅子を片手で持ち上げ、ラチを床に押し倒し、強さを誇ります。
「きみも つよくなりたいなら、ぼくが つよくしてやるよ」
そして「らいおん」は、ラチに強くなるための体操を教えます。
ラチが出かけるときには、「らいおん」はポケットに入ってついていきます。
「ぼくには、らいおんが ついているんだ」
と思うと勇気が湧いて、ラチは犬を怖がる女の子の手を引いてやり、暗い部屋にも物を取りに行けるようになります。
だんだん自信をつけていくラチ。
ある日、のっぽの男の子にボールを取られた友達がしょんぼりしているのを見て、ラチはボールを取り戻しに行きます。
全然自分を怖がらないラチを見て、のっぽの方が逃げ出してしまいます。
ボールを取り戻したラチは、「らいおん」にお礼を言おうと思ってポケットに手を突っ込みます。
するとそこには、「らいおん」の代わりにりんごがあるだけでした。
「らいおんが ついていなくても、ラチはつよかったのです」
「ばんざい! ばんざい! ばんざい!」
ラチが走って家に帰ると、「らいおん」からの手紙が。
ラチの成長を見届けた「らいおん」は、自分の役目が終わったことを知り、また自分を必要とする子どものところへ行ったのでした。
★ ★ ★
「強さ」とは何か。
ここではようするに「自信」のことです。
それも大げさなものではなく、何かをする時に、最初の一歩を踏み出す力のことです。
でも、それが案外難しい。
大人から見ると、「どうしてそんなことができないの?」と思うようなことで、引っ込み思案になってしまう子どもはたくさんいます。
変なものを怖がったり、公園の遊具に尻込みしたり。
そんな時、「やればできる」は禁句です。
子どもはプレッシャーを感じ、余計に頑なになります。
もちろん、やればできるのは当たり前です。
問題はどうやって最初の一歩を踏み出すかなのです。
子どもだって、この恐怖心を克服しなければならないことは、誰よりも自分自身がわかっているのです。
それはとてもナイーブな感情で、親といえども軽々に立ち入ることのできない心の領域なのです。
この作品が、そんなナイーブな領域にすっと入り込めるのは、その簡潔でユーモラスな文と絵の力によるものです。
計算され尽くした「らいおん」のキャラクターによるものです。
一見すると適当に見える絵ですが、そこからはラチの成長や、その輝かしい未来を明確に思い描くことができます。
「ラチとらいおん」は黒い表紙で、サイズは15×23くらいの小さな絵本です。
あまり目立たず、本棚の片隅にそっとしまわれているような。
でも、そういうのが、案外持ち主にとって大事な本だったりするのです。
人はみんな、心の中の小さなスペースに、それぞれの「らいおん」を置いてあるのではないでしょうか。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
「らいおん体操」のユルユルさ度:☆☆☆☆☆
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