【絵本の紹介】「ラチとらいおん」【137冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回はハンガリーのロングセラー絵本「ラチとらいおん」を紹介します。

文・絵:マレーク・ベロニカ

訳:徳永康元

出版社:福音館書店

発行日:1965年7月14日

 

せかいじゅうで いちばん よわむし」な男の子・ラチと、彼を強くするためにやってきた「ちいさな あかい らいおん」のお話。

「ドラえもん」をイメージさせるスタイルの物語です。

 

何と言っても、この「らいおん」のキュートなこと。

(・ω・)←こんな顔が、2頭身に収まっていて、今でもじゅうぶんゆるキャラとして通用する絶妙なキャラクターデザイン。

 

なおかつ、文と絵がテキトーなようでいて、なぜか心に響きます。

 

ラチは犬を見ると逃げ出し、暗い部屋には怖くて入れません。

友達からも馬鹿にされ、遊んでもらえません。

 

そんなラチが好きなのはライオンの絵。

ぼくに、こんな らいおんがいたら、なんにも こわくないんだけどなあ

 

ところがある朝、目を覚ますとベッドのそばに、「ちいさな あかい らいおん」がいます。

花瓶の花を一本口にくわえて、にくいポーズを取る「らいおん」。

その滑稽さにラチは大笑いし、「らいおん」は怒ります。

 

椅子を片手で持ち上げ、ラチを床に押し倒し、強さを誇ります。

きみも つよくなりたいなら、ぼくが つよくしてやるよ

 

そして「らいおん」は、ラチに強くなるための体操を教えます。

 

ラチが出かけるときには、「らいおん」はポケットに入ってついていきます。

ぼくには、らいおんが ついているんだ

と思うと勇気が湧いて、ラチは犬を怖がる女の子の手を引いてやり、暗い部屋にも物を取りに行けるようになります。

だんだん自信をつけていくラチ。

ある日、のっぽの男の子にボールを取られた友達がしょんぼりしているのを見て、ラチはボールを取り戻しに行きます。

 

全然自分を怖がらないラチを見て、のっぽの方が逃げ出してしまいます。

ボールを取り戻したラチは、「らいおん」にお礼を言おうと思ってポケットに手を突っ込みます。

 

するとそこには、「らいおん」の代わりにりんごがあるだけでした。

らいおんが ついていなくても、ラチはつよかったのです

ばんざい! ばんざい! ばんざい!

ラチが走って家に帰ると、「らいおん」からの手紙が。

ラチの成長を見届けた「らいおん」は、自分の役目が終わったことを知り、また自分を必要とする子どものところへ行ったのでした。

 

★      ★      ★

 

「強さ」とは何か。

ここではようするに「自信」のことです。

 

それも大げさなものではなく、何かをする時に、最初の一歩を踏み出す力のことです。

でも、それが案外難しい。

 

大人から見ると、「どうしてそんなことができないの?」と思うようなことで、引っ込み思案になってしまう子どもはたくさんいます。

変なものを怖がったり、公園の遊具に尻込みしたり。

 

そんな時、「やればできる」は禁句です。

子どもはプレッシャーを感じ、余計に頑なになります。

 

もちろん、やればできるのは当たり前です。

問題はどうやって最初の一歩を踏み出すかなのです。

子どもだって、この恐怖心を克服しなければならないことは、誰よりも自分自身がわかっているのです。

 

それはとてもナイーブな感情で、親といえども軽々に立ち入ることのできない心の領域なのです。

 

この作品が、そんなナイーブな領域にすっと入り込めるのは、その簡潔でユーモラスな文と絵の力によるものです。

計算され尽くした「らいおん」のキャラクターによるものです。

一見すると適当に見える絵ですが、そこからはラチの成長や、その輝かしい未来を明確に思い描くことができます。

 

「ラチとらいおん」は黒い表紙で、サイズは15×23くらいの小さな絵本です。

あまり目立たず、本棚の片隅にそっとしまわれているような。

でも、そういうのが、案外持ち主にとって大事な本だったりするのです。

 

人はみんな、心の中の小さなスペースに、それぞれの「らいおん」を置いてあるのではないでしょうか。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

「らいおん体操」のユルユルさ度:☆☆☆☆☆

 

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