2017.05.23 Tuesday
【絵本の紹介】「アンガスとあひる」【127冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介するのは古典絵本「アンガスとあひる」です。
作・絵:マージョリー・フラック
訳:瀬田貞二
出版社:福音館書店
発行日:1974年7月15日
作者のマージョリー・フラックさんはワンダ・ガアグさん(「100まんびきのねこ」の作者)とともに、アメリカ絵本の基礎を築いたとされる人です。
日本での刊行は1974年のことですが、この絵本が発表されたのは実に87年前、1930年です。
色も少なく、コストカットなどの理由から片面カラーで、モノクロのページと交互に展開される印刷は、現代の目から見れば少々地味に映るかもしれません。
また、ストーリーも単純で、目を見張るほどのドラマはありません。
しかし、注目するべきは、その構成、ページ配分の妙、動きを持たせるための様々な工夫です。
絵本を単なる挿し絵のついた本や画集ではない表現分野にするための腐心とも言えます。
アンガスは好奇心旺盛なスコッチテリアの子犬。
見るもの嗅ぐもの、何でも知りたがりましたが、普段は紐に繋がれていて、自由に調べられません。
ある日、紐が外れているチャンスを得たアンガスは、以前から気になっていた庭の生垣の向こう側から聞こえる「ガー、ガー、ゲーック、ガー!」という音の正体を確かめに飛び出します。
音の正体は二羽のあひる。
アンガスは吠えたててあひるを脅かし、水飲み場から追い立ててしまいます。
勝ち誇ったように水飲み場を占拠するアンガス。
しかし……。
あひるたちの突然の逆襲に遭い、アンガスは慌てて逃げ出します。
そしてどうにか家に飛び込んで、ソファの下に潜り込みます。
★ ★ ★
この絵本の軸となっているのは、ひたすらアンガスの「行動」です。
読み手はページをめくることでアンガスの動きを追うわけですが、アンガスの位置(あひるに追われて、だんだん画面隅へ追いやられ、最後には尻尾のみになります)、さりげない文のリード(次のページへまたがる文が多数あります)、クライマックス前の静けさの演出(アンガスが水を飲み、あひるたちが不気味に話し合っている図)など、実によく計算されています。
そして、ラストシーンの3連続のアンガスの静止画と、
「そして、とけいの きざむ、いち」
「に、」
「さんぷんかん、なにごとも しりたいと おもいませんでした」
という文の呼吸も見事な効果を生んでいます。
派手さはなくとも、こうした様々な試みに成功したことが、のちの絵本作家たちに多大な影響を与えたことは間違いないでしょう。
そしてもちろん、この「アンガスとあひる」は現代でも子どもたちに読み継がれ、じゅうぶんに支持される作品であり続けています。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
静と動の巧みな使い分け度:☆☆☆☆☆
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