【絵本の紹介】「すてきな三にんぐみ」【123冊目】

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは「すてきな三にんぐみ」です。

作・絵:トミー・アンゲラー

訳:今江祥智

出版社:偕成社

発行日:1969年12月

 

アンゲラーさんの絵本をこのブログで取り上げるのは初ですね。

才能あふれる絵本作家は数あれど、アンゲラーさんほどにセンスの良い方はそうはいません。

 

つまり題材の選び方、絵と文章の配分、構成、物語の展開、効果的な色使い、そして強烈な独創性……これらすべてにおいて「さりげなく、それでいて非常に的確である」のが、アンゲラーさんの絵本作りの特徴です。

さらに付け加えるならば、アンゲラーさんの絵本はどれも鋭い風刺が効いていますが、それらは少しも違和感なく、さらりとした印象です。

 

この「すてきな三にんぐみ」は彼の代表作で、有名な作品ですが、まず目を引くのが黒とダークブルーを基調とした暗い配色です。

それはそれは こわーい、どろうぼうさま」の三人組の不気味さが際立ちます。

おどしの どうぐ」の禍々しさも、恐怖を煽る赤色で強調されています。

どろぼう、と言いながら、彼らの手口は強盗です。

夜な夜な馬車を止め、乗客から金品を強奪します。

 

三人組は表情も見えず、セリフもなし。

前半はひたすら恐ろしいどろぼうとして描かれます。

 

ところが、ある時、転機が訪れます。

いつものように馬車を止めたところ、お客は「みなしごの ティファニーちゃん」だけ。

意地悪なおばさんの家へやられる途中だったのですが、三人組を見て、「なんだか おもしろそう」と、むしろ喜びます。

お宝は何にもなかったので、三人組はティファニーちゃんを大事に抱え、隠れ家へ連れ帰ります。

隠れ家でお宝の山を見つけたティファニーちゃんは、

まぁぁ、これ、どうするの?

この質問に、意表を突かれる三人組。

実は、盗んだはいいけど、「どうするつもりも なかった」んですね。

そこで、相談の末、三人組は国じゅうの不幸な孤児たちを集め、お城を買い取り、そこでみんな一緒に暮らすことにするのです。

 

噂は国じゅうに広がり、子どもたちは次々に増え、やがてそれぞれに結婚し、村を作ります。

 

★      ★      ★

 

中盤から後半に至る、鮮やかな転換。

前半、恐ろしさの象徴だった赤を、子どもたちのおそろいのテーマカラーにするという演出も冴えています。

 

どろぼうの三人組が、どうして「すてき」なのか。

もちろん最後に素晴らしい善行を施したからということもあります。

でも、私が彼らのことを「すてき」だと思ったのは、宝をどうするつもりもなかったところ。

 

ある意味、純粋で真面目なんです。

真面目に泥棒稼業に精を出していたものの、別に私腹を肥やしたいとか、いい生活がしたいとか、そういう我欲はなかったんでしょう。

 

ティファニーちゃんのしたたかさもいい。

きっと色々と辛い目に遭ってきたと想像できるんですが、そこから身に付けた強さなのだと思います。

他の大人たちは三人組の見た目に恐れおののいてしまうのに、彼女が怖がらないどころか自らついて行こうとするのは、三人組が見た目のような恐ろしい人間ではなく、真面目で純粋な面があることを見抜いたからでしょう。

 

……などなど、こちらにあれこれ想像の余地を残してくれているところが、この絵本が名作たるゆえん。

もちろん、アンゲラーさんはちゃんと計算づくでしょう。

 

読み聞かせをする時は、前半、うんと怖く読んでやりましょう。

それで子どもが怖がってやめたがったら、まだ早いということです。

 

推奨年齢:4歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆☆

色使いの見事さ度:☆☆☆☆☆

 

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