2017.04.19 Wednesday
【絵本の紹介】「じめんのうえとじめんのした」【109冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
子どもは本来、大人よりもずっと知に対して貪欲で、この世界の法則を知りたがっています。
大人を質問攻めにする時期が来たら、それは喜ぶべきことです。
長い将来に亘って、子どもが主体的に何かを学ぼうとする態度を身に付けることができるかどうかは、この時期の過ごし方にかかっていると言っても過言ではないと思います。
どんな「はあ?」と言いたくなるような質問でも、大人は丁寧に答えてやるべきです。
知ったかぶりや嘘はいけません。
もし、自分でもわからないことを尋ねられたなら、「それは知らない」と正直に答え、後で子どもと一緒に調べるのがいいでしょう。
「知らないことを調べる」という一種の作法を、子どもに伝えることになります。
子どもが、ごく幼い時期から自然科学に大きな興味を示すものだということを、私に教えてくれた絵本があります。
それが今回紹介する「じめんのうえとじめんのした」です。
作・絵:アーマ・E・ウェバー
訳:藤枝澪子
出版社:福音館書店
発行日:1968年3月1日
ウェバーさんはアメリカの植物博士。
ですから、プロの絵描きさんではありません。
でも、味のあるイラストです。
内容は単純にして明解。
地面の上にすむ動物と、地面の下にすむ動物。
それに、その両方ですむ動物がいることを説明します。
そして、普段は見えない地面の下に、植物の根が伸びていることを断面図で解説。
植物にもいろいろあり、ナラやポプラの木、そしてジャガイモや人参など、それぞれが違った形態で生長していることを丁寧に教えてくれます。
さらに、植物の光合成に触れ、
「じめんの うえに すむ どうぶつも じめんの したに すむ どうぶつも、しょくぶつの おかげで いきているのです」
と締めくくります。
★ ★ ★
最初手に取った時、こんなに地味な絵と文で、本当に淡々と事実だけを語るような絵本が、子どもに受けるのかどうか、疑問に思ったものです。
けれど、息子(当時2歳)に読んでやったところ、意外に喜んで、興味津々で見ていたんですね。
もちろん、内容を完全に把握して理解できたわけではないと思います。
たぶん、「断面図」が気に入ったんでしょう。
「見えない部分」を見せてくれることに喜んだのです。
息子はこの絵本を読んでから、外に出かける際には、木や草の根元をじっと見つめたりするようになりました。
きっと、その下に広がっているであろう世界を想像していたのだと思います。
この絵本が長年に亘って人気なのは、子どもの知的な好奇心や探究心が、いかに深いかを証明しています。
それなのに、成長するにつれ、次第に「勉強嫌い」になっていくのは、やっぱり我々大人の責任ではないでしょうか。
また、私が個人的に気に入っているのは、作者が「腐植土」などの難しい言葉を使うことを忌避していないところです。
文体はあくまで易しく丁寧であっても、あえて「子どもにもわかる言葉」だけで語ろうとはしていないあたりに、子どもへの敬意を感じられるのです。
絵本にはひとつかふたつくらい、今の年齢では理解しがたいような言葉が入っていてもいいと思います。
それがまた、子どもの言葉や知識への欲望を刺激するからです。
推奨年齢:5歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
ザ・科学絵本度:☆☆☆☆☆
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