2017.04.14 Friday
【絵本の紹介】「コッコさんのともだち」【108冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
入学式・入園式も終わり、新しい生活に入った子どもたちがたくさんいるでしょう。
陳腐な言い回しですが、期待と不安の入り混じった子どもの表情って、なんだか言い表せないものを感じます。
期待と不安は親も同じで、むしろ不安の方がずっと多いかもしれません。
ちゃんと友達を作って、楽しく遊べるだろうか。
けんかしないだろうか。
わがまま言って、先生を困らせないだろうか。
親の心配事というのは、多少の違いはあれども、どこも似たようなものでしょう。
今回紹介するのは、そんな時期に読みたい一冊、「コッコさんのともだち」です。
作・絵:片山健
出版社:福音館書店
発行日:1991年4月10日
「コッコさん」シリーズの3作目。
このブログでは初登場です。
まず、この絵がいいです。
子どもを可愛く描いてない。
と言うと語弊がありますが、大人が考える「子どもの可愛さ」って、大人自身の願望とか固定概念が反映されたものであることが多い。
でも、片山さんは、そういう大人の都合のいい目線ではなく、子どもの「そのまま」を見て、描いています。
それは内面描写の秀逸さにも表れています。
それでいて、子どもに対する愛情の深さが半端じゃない。
作者の「コッコさん」への溺愛ぶりなんかは、もう、読んでいるこちらがムズムズしてしまうくらいです。
それもそのはずで、「コッコさん」のモデルは、片山さんの娘さんなんだそうです。
ゆえに、このシリーズは全般通して、「娘を見る父親」の眼差しをひしひしと感じます。
「コッコさんは ほいくえんで ひとりぼっち。なかなか みんなと あそべません」
「コッコさんは ほいくえんで どうして そんなに ひとりぼっち」
この文章も「いいなあ」と思います。
保育園の片隅で涙を拭いているコッコさんを見守っている父親の情が、「どうして」の部分に集約されているようです。
父親は絵本には登場しませんけど、きっともう、おろおろしながら見ているんだと思います。
でも、ある時、二人ずつ手をつなぎましょう、と先生に言われて、コッコさんは、同じように誰とも手をつなげないでもじもじしているアミちゃんに気が付きます。
ふたりはもじもじしながらも、お互いの服の色が似ていることから気を許し始め、手をつなぎます。
「すると だんだん うれしくなって もっと もっと うれしくなって うんと うんと うれしくなりました」
子どもの細かな心理を、本当によく捉えた場面です。
特に、「服の色が同じ」ことをきっかけにするあたり、こんな気持ちを覚えている大人はそうはいません。
ふたりは仲良しになって、それからは毎日保育園で一緒に遊びます。
でも、やがて喧嘩してしまう日が来ます。
その後、ふたりは初めて他の子と遊び、初めてみんなで遊びます。
そして次の日、コッコさんとアミちゃんは
「やっぱり いっしょに」
遊びますが、そこには他の子の姿もあります。
「コッコさんは ほいくえんで もう ひとりじゃない ひとりじゃない」
★ ★ ★
子どもは変化し続けます。
その速度は、大人が思うよりもずっと早く、ほとんど一日おきに別人になっていくかのようです。
この絵本はそんな子どもの心身の変化を、見事に捉えています。
「変な絵」と、とっつきにくさを感じていた方も、読み終えてみると、なんだかコッコさんが愛おしくなってきませんか?
推奨年齢:2歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
(いい意味での)親バカ度:☆☆☆☆☆
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