2017.04.12 Wednesday
【絵本の紹介】「さる・るるる」【106冊目】
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
子どもを観察していて感心させられることは山ほどありますが、中でも言葉に対する彼らの感受性・吸収力の高さにはいつも驚かされます。
子どもは、大人の発する言葉を単に「模倣」しているわけではありません。
彼らは言葉を注意深く(そして驚嘆すべき速度で)分析し、分類し、「仮説」を当てはめ、「応用」しようと試みます。
我が家の例を挙げれば、息子が2歳のころ、
「ふたりぼっち」
という造語を用いたことがあります。
これは明らかに「ひとりぼっち」から推測した「派生語」です。
(たまに見かける造語ですが、息子がそれを耳にしたことはありません)。
また、私たち大人は、アニメDVDなどの映像を「観る」と表現しますが、息子はそれを
「聞いて、見る」
と毎回のように訂正していました。
考えてみれば、そうした行為には「音声を聞く」作業が含まれているのだから、息子にしてみれば「見る」というだけでは「足りない」と感じられたのでしょう。
これらのことからも、子どもが単純に大人の言葉を「コピー」しているわけではなく、(無意識に)凄まじい知的探求心でもって、解釈し、自分のものにしようと努力していることがわかります。
また、子どもは「韻を踏んだ」言葉が大好きで、そういう言葉を発見すると、1時間でも2時間でも繰り返して口ずさみます。
それは言葉の「練習」というよりは、もっと本能的な歓びに因しているように思われます。
つまり、子どもにとって「言葉」とは、「意味」と「音」の美しい「調和」であるべきだ、と直感されているのではないでしょうか。
そういった、子どもの詩的とも言うべき言葉への感性は、大人には及びもつかない鋭さを持っています。
前置きが長くなりましたが、上に述べたようなことを考慮すれば、今回紹介する「さる・るるる」が、子どもに絶大な人気である理由もわかるような気がします。
作・絵:五味太郎
出版社:絵本館
発行日:1979年11月
毎回遊び心が満載の五味太郎さんの絵本。
これは、「る」で終わる動詞のみでストーリーが紡がれていく作品です。
「さる・くる」
「さる・みる」
「さる・ける」…
こう読み始めるだけで、息子は大喜びし、さるの行動を自分でも再現します。
絵だけでもじゅうぶんに物語は読めますし、何と言っても、さるが抜群にユーモラス。
「さる・える」
「さる・せる」
あたりは、子どもには少し理解しにくい動詞ですが、細かいことは気にしない。
いずれわかります。
子どもにとって言葉とは、「意味」以前に「響きの心地よさ」がなければならないのです。
推奨年齢:2歳〜
読み聞かせ難易度:☆
読み終わった後も、必ず「る」遊びが続く度:☆☆☆☆☆
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