2017.03.24 Friday
誰でも持っていて、お金もかからなくて、絶対に外さない子どもへの贈り物
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回は、特に、父親についての話です。
母親とはまた違った意味で、父親って難しいものです。
お腹を痛めないで子どもを持つことは、言い換えれば頭で考えて「親」になるわけで、そうするとなかなか即座に実感を得るのは困難です。
もちろん、そうでないお父さんもいらっしゃるでしょう。
そういう方は幸福だと思います。
私はそうではありませんでしたから。
出産にも立ち会いましたが、思ってたほど感動しませんでした。
夜中〜早朝にかけての分娩でしたので、とにかく眠かったこともあったし。
やたら印象に残っているのは、赤ん坊の爪が信じられないくらい小さかったこと。
自分は子どもを愛せるのだろうか。
そもそも、愛ってなんだろうか。
何かを与えることが愛なら、自分はこの子に何を差し出せるだろう。
生まれたばかりの息子を抱いて、そんなことを考えていました。
私にはお金もないし、愛情もあるのかどうかわからないし、何かを教えてやれるほどの人生経験もないし。
考えた末、たったひとつ、息子にあげることのできるものを見つけたのです。
誰もが持っていて、お金のかからないもの。
でも、意外と人にはあげたくなくて、自分だけに使いたいもの。
それだけに価値があるもの。
それは自分の「時間」です。
★「三つ子の魂百まで」
子どもの能力や性格やその後の人生に、もっとも大きく影響を与えるのは、生まれてから3年間の環境だと言われています。
それほどに重要な「最初の3年」。
なら、自分の人生の3年間を、この子に「あげる」ことにしたのです。
そのひとつが「いつでも、何度でも」の絵本の読み聞かせです。
それ以外の時間も「あげた」以上は、私のものではなく息子のものです。
息子が遊びたがれば、いつでも応じなければなりません。
もちろん、すべてに応じれるわけではありません。
仕事しないと生活できないし。
でも、家にいる間は、「自分の時間」はありません。
トイレに行く時でさえ、断りを入れて行きます。
やってみると、肉体的にも精神的にも、相当辛かった。
★3年間が過ぎて思うこと
正直なところ、とても完璧にやれたとは言えません。
最初のうちは、せいぜい30分もすると苦痛でした。
眠りたい、本が読みたい、調べものがしたい、友人と遊びたい、とにかく一人で出かけたい……。
次々と欲求が湧いて出て、それに負けることもしょっちゅうでした。
でも、3年が過ぎ、読み聞かせた絵本が1000冊を超えたころ、その生活にも慣れました。
不思議なものです。
あれほど「自由になりたい」と願っていたのに、今は、むしろ一人でいた時よりも自分が「自由である」と感じるのです。
時間を「独り占めしたい」と思っていた私は、実は不自由な人間だったのかもしれません。
そして、おぼろげながらも、「これが愛なのかな」と感じることがあります。
子どもと、心が繋がっていると感じることもできます。
我ながら、ずいぶんと人間らしくなったものだと思います。
何のことはない、この3年間で、私の方が息子から多くのものをもらっていたのです。
★勘違いしやすいこと
誤解してほしくないのは、繰り返すようですが、子どもに時間をあげるんですから、その時間は子どものものだ、という点です。
子どもを自分に付き合わせるのではありません。
「将来、この子をスポーツ選手に」
とか、
「東大生に」
とか、早教育に血眼になっているのは、それはむしろ「子どもの時間を奪っている」んです。
もうひとつ、私は基本的に子どもの言うことを何でも聞きますが、「何でも買い与える」ことはしません。
だって、あげたのは「時間」であって「お金」や「物」ではないですから。
★最後に
けっして簡単じゃないし、自分自身もちゃんとできなかったことを人に勧めるのもどうかとは思うんですが、それでも、世のお父さん方にぜひ勧めたいのです。
ゴミ出しとか、風呂掃除とか、そんなもん(大事ですけど)どうだっていい。
1時間でも、30分でも、子どもと一緒にいてあげて欲しい。
毎日1冊だけでもいいから、絵本を読んであげて欲しい。
たった3年、されど3年。
この3年を子どもに差し出せたなら、「自分は子どもを愛している」と言ってもいいんじゃないでしょうか。
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