2017.03.23 Thursday
絵本の紹介「ぼく おかあさんのこと・・・」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介するのは、男の子がいるお母さんにおすすめの一冊「ぼく おかあさんのこと・・・」です。
作・絵:酒井駒子
出版社:文渓堂
発行日:2000年5月
「リコちゃんのおうち」で作家デビュー、「よるくま」でその人気を不動のものにした酒井駒子さんの、これは3作目になる作品です。
酒井さんの描く動物や子どもの表情はどこか愁いを帯びて、不思議な吸引力を持っています。
もとよりずば抜けた画力の作家さんでしたが、この「ぼく おかあさんのこと・・・」が、彼女の画風の、ひとつの転機となっています。
「ぼく おかあさんのこと・・・」
「キライ」
という、うさぎくんのドキッとするような告白で始まります。
その理由が、なんともいちいちリアルで、現代のお母さんをハッとさせるようなものばかりです。
「にちようびのあさは いつまでも ねてる。いつまでも いつまでも」
「ドラマ ばっかり みて マンガ みせてくれないし」
「すうぐ おこるし・・・」
ただ、うさぎくんは本心ではお母さんのことが大好きです。
「ぼくは おかあさんとしか けっこんしたくないのに」
そんなお母さんへの愛情や不満を募らせて、うさぎくんは家出します。
お母さんは寝たふりをしながら、うさぎくんが出て行く音を聞きます。
でも、これはうさぎくんの、いじらしいポーズで、すぐにまた戻ってきて、お母さんに、
「ぼくと またあえて うれしい?」
と問いかけます。
嬉しくないわけがない。
★ ★ ★
うさぎくんが愛おしい。
とにかく絵が上手いんですが、うさぎくんの仕草のひとつひとつを取っても、よく子どもを観察していると感じます。
そして、これはむしろお母さん目線の絵本です。
うさぎくんのお母さんは、すごくダメでも立派でもありません。
子どもを愛してはいるけれど、毎日の忙しさに追われて、つい……という、どこにでもいそうなタイプの母親です。
それだけに、うさぎくんの言葉は胸に刺さるでしょう。
うさぎくんのお母さんの心情は、文章では書かれません。
でも、息子が出て行ったあと、起き上がってうつむくお母さんの胸の内は、男の子を持つ母親なら、誰もが読み取れるはず。
忙しくて余裕がなくなっていると感じた時、ひとりで手に取って、そして「子ども時代」がいかに短いものかを思い出してほしい。
そんな一冊です。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
ちゃんと洗濯してもらってよかった度:☆☆☆
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