2017.03.22 Wednesday
絵本の紹介「ねむいねむいねずみ」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
春眠暁を覚えず。
というほどではありませんが、やっと少し暖かくなってきましたね。
今回は佐々木マキさんの人気シリーズより「ねむいねむいねずみ」を取り上げます。
作・絵:佐々木マキ
出版社:PHP研究所
発行日:1979年6月29日
見ている方も眠くなってしまいそうな寝ぼけマナコがキュートなねずみの、珍道中。
これはシリーズ第一作。
一見、可愛らしい絵柄の、親しみやすそうな本に思えるのですが(事実そうではあるんですが)、読みようによっては相当に難解な作品でもあります。
もっとも、佐々木マキさんの描く世界は、基本的に難解です。
そして、どこか不気味でもある。
登場人物の、何も映していないブラックホールみたいな目が、ちょっと怖かったり。
というのも、私は子どものころに佐々木さんが挿絵を担当している児童書を読んだことがあり、それが大変怖い内容だったのです(一部では知る人ぞ知るトラウマ本とされています)。
その印象が強烈だったせいか、今でも彼の可愛らしい絵の裏側の、少々の狂気を感じずにはいられません(いい意味で)。
佐々木さんは雑誌「ガロ」誌上で漫画家としてデビュー。
つげ義春と並び称される前衛的・実験的な作品を次々に発表しました(その才能は、手塚治虫御大が嫉妬したとまで言われています)。
絵本作家に転身してからも、漫画的技法(フキダシ・コマ割りなど)を取り入れ、同じ漫画家出身の長新太さんを彷彿とさせる、ナンセンスの中に哲学的な深みを包含した独自の作風を構築していきます。
さて、そろそろ「ねむいねむいねずみ」の内容に入りましょう。
風呂敷包みを結び付けた杖を肩に、という伝統的スタイルで旅をするねずみ。
一日中歩いて、くたびれ果てた状態で見つけたのは、一軒の古い屋敷。
中に入ると、荒れ果てており、どう見ても無人。
ねずみはここで一夜を明かすことにします。
どう考えても怖いと思うのですが、何しろ眠くてたまらないので、気にしない。
ところが、眠ろうとすると次々に怪現象がねずみを襲います。
いわゆるポルターガイストで、ベッドやタンス、鳩時計、空き瓶たちが踊り狂い、とてもじゃないけど眠れません。
それでもねむいねむいねずみは、逃げ出すことよりも、とにかく横になって眠りたい。
ついには浴槽で眠り込んでしまいますが……。
結局、朝までぐっすり眠ったねずみ。
目を覚ますと、朝ごはんの用意が。
「やっぱり ここは おばけやしきなんだねぇ」
★ ★ ★
何とも不思議な読後感。
結局何だったの? と大人は首をひねってしまう。
ねずみの旅の目的もはっきりしないし、こちらの想像におまかせ、といった感じがあります。
あれこれ起こる事件を、「眠気」で乗り越えてしまうというおかしさを楽しむ絵本。
と捉えればそれでいいんですが、私などはつい「そんな単純じゃないんでしょ」と深読みしようとしてしまいます。
人間の意識はどこまで目覚めていると言えるのか、とか。
現実と夢の境界線、とか。
でも一方で、そんな風に深読みする姿を、作者に笑われているような気もします。
意味なんてないんだよ。
受け取ったものがすべてで、それをそのまんま楽しめばいいんだよ。
と。
実際、子どもはこの絵本が大好きですし、「そのまんま」楽しんでいるようです。
佐々木さんは、絵本というものの在り方そのものを、根本的に問いかけるような作家さんです。
推奨年齢:4歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
睡眠欲求度:☆☆☆☆☆
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