2017.03.21 Tuesday
絵本の紹介「かもさんおとおり」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介するのは、「かもさんおとおり」です。
文・絵:ロバート・マックロスキー
訳:渡辺茂男
出版社:福音館書店
発行日:1965年5月1日
これまた有名なロングセラーですので、子どものころに親しんだ方も多いのではないでしょうか。
古き良き時代のボストンを舞台にした、かもの親子の心温まるお話。
実際にあった話をもとにした絵本です。
セピア一色で描かれた絵は優しく、ユーモラスながらも緻密で、特に空飛ぶ鳥の目線から俯瞰した街並みの描写は素晴らしく、自分も飛んでいる気分を味わえます。
かものマラード夫婦は、卵を孵すのによい場所を探して、ボストンを飛び回ります。
「マラードさんが、よさそうなばしょを みつけるたびに、マラードおくさんが、そこはだめよ と、いうのです」
なんだか、人間の夫婦間のやり取りを見ているようです。
子どもを育てることに関しては、やはり母親のほうが妥協を許さない姿勢を持っているものなのでしょう。
マラードさんはいい旦那で、疲れていても妻の意見を尊重します。
世の夫たちも学ぶべし。
やがて、チャールズ川の小島に巣を作ることにしたマラード夫婦。
無事、八匹のヒナを孵します。
マラードおくさんは、ヒナたちに泳ぎ方や一列に並んで歩くことを教え、マラードさんの待つ公園へ出発します。
しかし、街中をかもが一列に歩いていくのですから、車の多い道路は大騒ぎ。
そこで、以前からかもさん夫婦にピーナッツをあげるなどして親しくしていた警官のマイケルさんが飛んできます。
マイケルさんの助けを借りて、マラード親子は道路を横切ります。
さらにマイケルさんはパトカーに救援を頼み、かもたちを公園まで誘導します。
マラード親子は警官たちにお礼を言い、無事に公園でマラードさんと再会するのでした。
★ ★ ★
胸を張って、誇らしげに道路を歩くマラードおくさんと、整然と一列に並んでついて行くヒナたちの姿が、滑稽でありながら絶妙にリアルなのは、マックロスキーさんの画力のたまものでしょう。
マックロスキーさんは、かものヒナを描くにあたって、非常な苦労をされました。
自身のアパートへ6匹ものヒナを連れ帰り、じっくり観察してスケッチしようと試みたそうです。
ところが、ヒナは動き回って少しもじっとしてくれないので、とうとう最後はシャンペンを飲ませて、ヒナを酔わせて、眠らせてしまったのです。
このやり方の是非はともかく、作者の熱意の凄まじさは伝わるエピソードですね。
そして、かも夫婦の、子どもに対する愛情、子育てに対する熱情も、親にとっては共感を呼ぶところです。
「マラードさんと マラードおくさんは、むねもはちきれそうになるほど よろこびました」
「こんなにたくさんの こがもたちを そだてるのは、たいへんな しごとです」
「さあ、いそがしくなりました」
いつの時代も変わらない親の気持ちを描いているところも、この作品が愛され続けている理由の一つでしょう。
推奨年齢:5歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆
母の誇りと威厳度:☆☆☆☆☆
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