2017.03.15 Wednesday
絵本の紹介「いちご」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
今回紹介するのは、平山和子さんによる「いちご」です。
作・絵:平山和子
出版社:福音館書店
発行日:1989年4月15日
そのおいしさもさることながら、見た目の可愛さから、ケーキにも引っ張りだこの人気者、イチゴ。
イチゴ、って響きもいいですよね。
草冠に母と書いて苺。
漢字も素敵。
何とも言えないあの形状。色。
外側が赤くて、中は白。
表面のツブツブ。
じっとイチゴを見つめていると、造形の見事さと不思議さに、感慨深い気持ちがこみ上げてきます。
作者の平山さんも、きっとそんな「イチゴ愛」を持ってこの絵本を作られたのだと思います。
平山さんは他にも「くだもの」「おにぎり」といった作品を手掛ける、「たべもの絵本」の第一人者です。
写実的な絵柄でありながら、写真とは違うこの味わい。
イチゴは地面から生えます。
ですから、定義上は果物じゃなくて野菜。
そんな科学絵本としての側面も。
文は「イチゴとの対話」という形式で進行します。
赤く熟したイチゴがあちこちから語り掛けてくるシーンでは、思わず手を伸ばす子どもも多いでしょう。
★ ★ ★
文は少なく、やさしく、読みやすく、入りやすく、幼児への読み聞かせにも適した絵本です。
でも実は、読み聞かせの構造としては、意外と複雑な側面を持っています。
この「イチゴを相手に語り掛けている」人物は描かれていません(一番最後に「いただきます」をする女の子は出てきますが)。
つまり、イチゴと話しているのは、この絵本を読んでいる読者自身の主観と解釈されます。
すると読み聞かせをする場合、「読んでいる」大人は、自分自身と、さらに「読んでもらっている」子どもの主観を同時に取り込むという、少々込み入った作業を処理することになります。
普通はそこまで意識せずに読むでしょうが、この作業は無意識にでも行われています。
何が言いたいかと言うと、「絵本を通しての親子の共感力」を育てるには、非常に良い一冊だということです。
可愛くてとっつきやすいけど、実は不思議で複雑。
そんなところもイチゴの魅力。
推奨年齢:2歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆
実はツブツブが果実という意外度:☆☆☆☆
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