絵本の紹介「いちご」

 

こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。

 

今回紹介するのは、平山和子さんによる「いちご」です。

作・絵:平山和子

出版社:福音館書店

発行日:1989年4月15日

 

そのおいしさもさることながら、見た目の可愛さから、ケーキにも引っ張りだこの人気者、イチゴ。

イチゴ、って響きもいいですよね。

草冠に母と書いて苺。

漢字も素敵。

 

何とも言えないあの形状。色。

外側が赤くて、中は白。

表面のツブツブ。

じっとイチゴを見つめていると、造形の見事さと不思議さに、感慨深い気持ちがこみ上げてきます。

 

作者の平山さんも、きっとそんな「イチゴ愛」を持ってこの絵本を作られたのだと思います。

平山さんは他にも「くだもの」「おにぎり」といった作品を手掛ける、「たべもの絵本」の第一人者です。

 

写実的な絵柄でありながら、写真とは違うこの味わい。

イチゴは地面から生えます。

ですから、定義上は果物じゃなくて野菜。

そんな科学絵本としての側面も。

文は「イチゴとの対話」という形式で進行します。

赤く熟したイチゴがあちこちから語り掛けてくるシーンでは、思わず手を伸ばす子どもも多いでしょう。

 

★      ★      ★

 

文は少なく、やさしく、読みやすく、入りやすく、幼児への読み聞かせにも適した絵本です。

 

でも実は、読み聞かせの構造としては、意外と複雑な側面を持っています。

 

この「イチゴを相手に語り掛けている」人物は描かれていません(一番最後に「いただきます」をする女の子は出てきますが)。

つまり、イチゴと話しているのは、この絵本を読んでいる読者自身の主観と解釈されます。

 

すると読み聞かせをする場合、「読んでいる」大人は、自分自身と、さらに「読んでもらっている」子どもの主観を同時に取り込むという、少々込み入った作業を処理することになります。

 

普通はそこまで意識せずに読むでしょうが、この作業は無意識にでも行われています。

何が言いたいかと言うと、「絵本を通しての親子の共感力」を育てるには、非常に良い一冊だということです。

 

可愛くてとっつきやすいけど、実は不思議で複雑。

そんなところもイチゴの魅力。

 

推奨年齢:2歳〜

読み聞かせ難易度:☆☆

実はツブツブが果実という意外度:☆☆☆☆

 

■今回紹介した絵本の購入はこちらからどうぞ→「いちご

■えほにずむでは、このブログで紹介した以外にも、たくさんのよい絵本を取り扱っております。ぜひ、HPも併せてご覧ください。

絵本の買取依頼もお待ちしております。

 

〒578−0981

大阪府東大阪市島之内2−12−43

URL:http://ehonizm.com/

E-Mail:book@ehonizm.com

コメント