2017.03.10 Friday
絵本の紹介「ハナミズキのみち」
こんにちは、絵本専門店・えほにずむの店主です。
明日で東日本大震災から6年。
亡くなった人々の無念、残された人々の悲嘆、そうした想いは悲しいことに年々風化していきます。
私には、それらを語る言葉がありません。
代わりに、震災から生まれた絵本を紹介します。
「ハナミズキのみち」。
文:淺沼ミキ子
絵:黒井健
出版社:金の星社
発行日:2013年5月
著者の淺沼(あさぬま)さんは、絵本作家ではありません。
岩手県陸前高田市の観光協会に勤める方です。
淺沼さんは2011年3月11日、震災による津波で、当時25歳だった息子の健(たける)さんを亡くしました。
消防団員だった健さんは、震災直後、高校生らを避難場所の市民会館へ誘導していました。
淺沼さんはこの姿を目撃しています。
人々を守ろうとする息子の姿に、誇りと頼もしさを感じ、その場を離れ、自身も自宅へ避難しました。
しかし、それが息子を見る最後の機会でした。
津波の巨大さは人々の想像をはるかに超え、避難場所の市民会館ごと押し流してしまったのです。
息子を失った淺沼さんは、悲しみのあまり眠れない夜が続き、呼吸困難に陥ることもありました。
何をしていても涙がこぼれる。
そんな日々が続きました。
けれどもある日、浅沼さんの夢枕に健さんが現れ、そしてはっきり聞こえる声で言ったそうです。
「いつまでも悲しまないで。それより、もう誰も津波で亡くならないように、高台への避難路に、目印にハナミズキを植えて」
淺沼さんは「ハナミズキのみちの会」を立ち上げ、多くの賛同者とともに、海から高台へ続く避難路の道沿いに、ハナミズキを植える活動を始めました。
もう誰も悲しまないように。
悲しみや辛さから目を背けるのではなく、それらを受け止めた上で、自分のやるべきこと、できることを、どんなに小さなことからでも始める。
それが本当の「前向き」な態度であり、「生き直す強さ」だと思います。
「私の想いを受けてください」
―――ハナミズキの花言葉です。
推奨年齢:6歳〜
読み聞かせ難易度:☆☆☆☆☆
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